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初めての人でも分かりやすい 経営者の心をつかむ 補助金サポート

経営者から顧問契約の依頼も! 会計事務所の武器となる補助金サポート

2016/07/22

 連載スタートとなる今回は、平成28年春号の『日税ジャーナル』に掲載された私のインタビュー記事をご紹介いたします。税理士業務において補助金サポートが身近なもので、かつ、強力な“武器”になることを皆さんに知っていただき、次回以降、補助金サポートに役立つ情報を随時提供していきたいと思います。

補助金を提案する力とサポートする力
事務所職員こそ両方を兼ね備えた人材

――補助金の申請などを積極的に支援されていますが、そのキッカケからお聞きします。
 平成24年度補正予算で創業補助金の公募が行われた時、東京都の創業補助金事務局で仕事をする機会がありました。審査自体には関わっていませんが、申請書の処理から審査までの一連の流れ、どのような申請書が採択されるかなど、申請する側には分からない内情や実例を現場で学ぶことができたのは、非常に貴重な経験でした。プロジェクトを終えて、通常の税理士業務に戻りましたが、事務局での経験を活かして経営者のお手伝いをしたいと思うようになり、それ以来、補助金サポートに力を入れています。まず初めに、補助金をテーマにしたセミナーを開催しましたが、企画から会場の手配、集客まですべて一人で行っていました。

――セミナーの参加者から仕事を依頼されることもありますか。
 経営者向けにセミナーを開催すると、参加者の半数くらいから補助金申請のお手伝いを依頼されます。特に、創業補助金を検討される方の大半は、顧問税理士がいませんので、補助金の支援から税務顧問の契約に繋がるケースもありますね。また、セミナーを受講されて諸々の理由からご自身が申請の対象外であることが判明するような場合もありますが、この場合には他の種類の補助金を提案したり、その他の資金調達等の相談に乗るなどしてその後の税務顧問契約に繋がったこともあります。

――確かに、補助金を受け取ることができれば、経営者の信頼も高まって顧問契約に繋がりそうですね。
 申請書が採択されて補助金を受け取ることも大事ですが、税理士にとって非常に大きいのは、補助金を申請するに当たり、経営者と一緒に事業計画を作り上げることです。経営者は一体何がしたいのか、どのように事業を発展させたいのか、お互いに膝を突き合わせて考えていく中で、信頼関係が生まれてきます。補助金をもらえるのであれば、それに越したことはありませんが、経営者との信頼関係の構築が、税務顧問の契約に繋がっているのではないかと考えます。ちなみに、申請書が採択されなかったとしても、しっかりとした事業計画が出来上がっていますので、そのまま金融機関に持ち込んで融資がおりることも珍しくありません。

――会計事務所が作った事業計画であれば、審査も通りやすいのではないでしょうか。
 運・不運も多少はありますが、おっしゃるとおり、経営者自身が事業計画を作成するよりも、プロの手による事業計画のほうが、審査が通りやすいのは確実です。では事業計画のプロとは、誰か。それは、日ごろから財務情報を取り扱い、資金計画の相談に乗り、多数の経営の例を間近で見ている我々会計事務所です。企業の補助金支援ということで言えば、税理士の先生方もそうですが、会計事務所の職員こそ、適任者だと考えています。

――なぜ、会計事務所の職員が適任だと思われるのでしょうか。
 大きく2つの理由があります。1つは、職員の方々は多くの関与先を担当し、経営状況などを日頃から把握していますので、個々の会社に適した補助金をマッチングさせることができる点です。もう1つは、経営者自身が事業計画を作成すると大変ですが、会計事務所の職員の中には、すでに関与先の事業計画を作成されている方もいますし、それほど経験がない職員でも皆さん元々数字に強く、また規定の読込みが得意ですので、慣れればすぐに作れるようになると思います。お客様に補助金を提案できて、それをサポートする力もある、これほど適した人材はありません。職員が自発的に補助金支援を行うことにより、顧問料以外の報酬が得られることはもちろん、他にも関与先目線での情報収集の感度が上がる、事業計画策定スキルの向上、関与先との信頼関係が強くなる、モチベーションの維持向上といった様々なプラスの効果も期待できます。

――補助金の情報はどこで入手できますか。
 「ミラサポ」や「J-NET21」というサイト内に補助金の検索画面がありますので、それらを利用して情報収集すると便利です。ただ、補助金の申請書類などをダウンロードすると、ページ数が多くて読むのが大変です。そこで、「誰が」「どの事業で」「どんな経費が使えるか」、そして「いつか」という4つのポイントを押さえながら読むと、補助金の概略を素早く把握できると思います。実際に補助金を申請する場合には、書類等を細かく読み込んでいく必要がありますが、最初のステップとして、関与先が補助金を使えるかどうかをふるいにかけるという意味でも、この4つのポイントを押さえておくのは有効です。ちなみに、補助金の情報を提供するだけでも、関与先によってはビジネスチャンスに繋がることがあります。

――具体的にどのようなケースでしょうか。
 例えば、会社が喫煙室などを設置すると、職場における受動喫煙防止対策として工事費が補助されます。その情報を建築業者や内装工事の関与先に伝えることで、それらの企業では、お客様が補助金を利用する工事の営業を展開することができます。そのほか、ホームページの制作費用について、ある自治体が補助金を交付するといった情報を入手した場合、その情報を関与先のホームページ制作会社に伝えることで、その自治体の地域に絞り込んだ営業活動ができるでしょう。それによって仕事が受注できなかったとしても、そうした補助金の情報提供を続けることで、会計事務所と関与先の信頼関係も深まると思います。

――そのためにも日頃からの情報収集は欠かせませんね。
 補助金の種類は非常に多いので、すべての情報を一人で網羅するのは至難の業です。そこで、例えば、関与先が使えそうな補助金の情報を職員が持ち寄り、会計事務所の朝礼や勉強会などで発表する機会を設ければ、新しい気付きなどが生まれて効果的だと思います。

――補助金のサポートにおいて注意すべき点があれば教えて下さい。
 まず、補助金の申請が採択されても、補助金が交付されるのは、実際に事業を行って完了報告を提出しその審査が終わってからです。その間、会社が費用を先払いすることになりますので、資金繰りの面で注意が必要です。また、補助金を受け取った後も5年間の報告義務があるほか、補助金の対象事業から多くの利益が生じた場合、補助金の一部を返納する「収益納付」があります。経営者の中には『儲かったら返さなければいけないなら補助金なんていらない』という方もいるかもしれません。しかし、事業の見通しが不透明な状況で、失敗した場合には補助金を返す必要がないのであれば、やはり大きなメリットではないでしょうか。

――補助金サポートは会計事務所の武器になりそうですね。
 私はそう思いますが、税理士によって補助金の捉え方に温度差があるのは事実です。「生産性向上設備投資促進税制」を利用している中小企業も少なくありませんが、恐らく、その大半は税理士の先生方がサポートしていると思います。そこを支援されていらっしゃるのであれば、補助金申請などのサポートは決して難しいものではありません。一方で、税額控除制度に手が届かない中小企業であっても活用できるところが補助金の魅力の一つでもあります。また、認定支援機関の認定を受けたものの仕事がないという声をよく聞きますが、例えばものづくり補助金を申請する場合、認定支援機関による支援が要件となっているため、ものづくり補助金に関心がある経営者の中には、認定支援機関を自分で探して問い合わせている方もいらっしゃいます。これは、非常にもったいないですね。そもそも、会計事務所の日常的な業務として、関与先の事業計画を作成しているところは少なくないと思います。補助金の申請のために事業計画を作るのではなく、関与先の事業計画における資金調達のひとつの手段として補助金がある――そんな捉え方をしてみると、イメージも少しは変わるのではないでしょうか。

 

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