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トラブルは現場で起きている!

自治労にも脱税の過去

2019/04/23

 今年の5月1日は特別に即位の日となっていますが、毎年5月1日はメーデーです。労働者の日とされています。今は労働組合も弱体化して組織率も20%を切っていますが、かつては労働組合の組織率は60%を超えて、メーデーもにぎわっていました。労働組合は、法人税法上は別表第2に掲げられる法人として公益法人や社会福祉法人、学校法人などと同じ公益法人等のグループに属します。法人組織になっていない労働組合は、人格のない社団等です。いずれにしても、収益事業があれば申告しなければなりません。

 自治労といえば、全国の地方自治体で働く職員などからなるわが国でも最大規模の労働組合ですが、その自治労が脱税をしたとして罰金5,000万円が言い渡されたのは、平成14年6月24日の東京地裁判決でした。自治労は、団体生命共済事業で得た事務手数料を収益事業として申告せず、簿外口座などに蓄えていたのです。その所得金額は平成9年3月期で3億3,500万円、平成10年3月期で2億6,700万円に上り、法人税等のほ脱額は2期分で、2億2,500万円と高額でした。それは、秘密の組織対策費や選挙運動の資金、飲食費・ゴルフ代など接待費に充てるための裏金だったのです。

 この脱税事件では、当時の中央執行委員長が懲役1年6月、事務局長が懲役1年の判決を言い渡されています。被告人らが、収益事業による所得を申告し納税すべきことを十分承知しながら脱税を続けたのは、もし裏金の存在を明らかにして全収入につき真実の申告をすれば、税務当局にそれまでの無申告について追及されるばかりでなく、労働組合の組合員からの批判が噴出し、自らを含む幹部役員の責任問題になることを恐れたからでした。もちろん、自由に使える裏金を失いたくないという気持ちも犯行の動機になっていました。いずれも自己保身目的であるとして、裁判所は厳しく断罪しました。

 一般納税者に不公平感や申告納税制度への不信感を抱かせるなど、社会的な悪影響を及ぼしたことも看過できないとしました。その上で、被告人らは社会的地位のある役職をすべて退き反省しているとして懲役刑の執行を猶予しました。

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