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トラブルは現場で起きている!

一般社団法人等を悪用した課税逃れにメス!

2017/12/18

 一般社団法人や一般財団法人は、会社のように誰かが所有する仕組みがなく、持分がありませんので、そこに個人の財産を移し替えてしまえば、相続税はかからず、いいように私物化して使うことができる。そんな虫のいい話があるわけがないのですが、いつの時代も、この手の話はなくなりません。

 政府・与党の平成30年度税制改正大綱が平成29年12月14日に公表されましたが、その中で“一般社団法人等を悪用した相続税の課税逃れ”を封じるとしていた制度の内容が明らかになりました。

 一般社団法人や一般財団法人は、私物化しないことを宣言して公益並みの収益事業課税を受ける非営利型法人と、私物化して会社並みの全所得課税を受ける法人の2通りがありますが、今回の税制は、私物化して会社並みの課税を受ける法人に対するものとなっています。

 一つは、個人から一般社団法人等に対して財産の贈与があった場合において、これまでも贈与税等の負担が不当に減少する結果となると認められる場合には、その一般社団法人等に贈与税等を課税する仕組みとなっていましたが、今回の改正はこれをさらに一歩進めて、私物化して会社並みの課税を受ける一般社団法人等には、贈与税等の負担が不当に減少する結果とならないものとされる要件を一つでも満たさない場合には、贈与税が課税されることとする、明確な規定を定めるとされました。

 贈与税等の負担が不当に減少する結果とならないものとされる要件には、役員等に占める親族等の割合が3分の1以下である旨の定款の定めがあることや、運営組織が適正であることなどが挙げられていますので、この要件を全て満たそうとすれば私物化が難しくなります。この制度は、平成30年4月1日以後の贈与・遺贈から適用されることとされています。

 もう一つは、一般社団法人等に相続財産を移し替えて相続税を免れようとしても、同族役員が死亡した場合には、その持分に相当する金額を法人が相続したものとして課税するものです。具体的には、その一般社団法人等の純資産額を同族役員の数で割って、その純資産額をその死亡した役員から遺贈により一般社団法人等が取得したものとみなして、その一般社団法人等に相続税を課税することとなっています。

 これは私物化して会社並みの課税を受けている一般社団法人等の中で、特に役員の過半数を同族役員が占める特定一般社団法人等を対象としています。この特定一般社団法人等は、同族役員の割合が相続開始の直前に過半数か、過半数になる期間が相続開始前5年以内に合計で3年以上かで判定され、同族役員は、理事のうち、被相続人、その配偶者、3親等以内の親族の他、被相続人が会社役員となっている会社の従業員等の特殊関係者とされています。

 この制度も平成30年4月1日以後の役員の死亡に係る相続税から適用されることとなっています。ただし、同日前に設立された一般社団法人等については、平成33年4月1日以後の役員の死亡に係る相続税から適用されるとなっているほか、平成30年3月31日以前の期間は、同族役員が過半数を超える期間に該当しないとされています。

 これだけ見ると、ずいぶんと目こぼしの多い、大甘な制度になっているように見えますが、果たしてこれで“一般社団法人等を悪用した課税逃れ”が封じられるのでしょうか。

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