暴かれた任意団体の所得隠し
2017/04/28
ドクターXといえば、「私、失敗しないので」の名セリフでおなじみ、どんな困難な手術も100%成功させるスーパー外科医のドラマです。地位も名誉もいらず、富にも執着しないフリーランスの外科医大門未知子の生き方は、米倉涼子の颯爽とした歩き方や「いたしません」というきっぱりとした口調とともに、見る者に爽快感を与えてくれましたが、それもこれも、作り物のフィクションの世界ならではのものといえます。
現実の世界となると、なかなかこうはいきません。名誉や地位はともかく、自然と集まってくる富に対しては、名医といえども施術は簡単にはいかないようです。
血管外科の名医として知られる慈恵医大の大木隆生教授が代表を務める任意団体の研究会とコンサル会社が、7年間で約9千万円の所得隠しをしていたとして、東京国税局の税務調査で指摘を受けていたことが、平成29年4月16日の新聞報道で明らかになりました。
この研究会は、法人税法上は「人格のない社団等」として、公益法人等と同じように収益事業のみの課税を受けます。今でもときどき、収益事業のみの課税を受けるのは、公益性の高い法人に対する優遇税制だという言説を見かけますが、正体の不明な任意団体でもそうなのですから、優遇税制であるわけがありません。利益の分配を前提としない法人や団体が、収益事業以外に課税を受けないのは、優遇税制でも何でもなく、当然のことなのです。
さて、この任意団体である研究会は、大木教授の手術をライブ中継して見学するシンポジウムを開催していたのですが、そこには料金を支払って提供を受けた展示スペースで、自社製品等を売り込む医療機器メーカー等の姿がありました。この展示のための料金は、出展小間料といって、公益法人等や人格のない社団等が受け取ると、収益事業の席貸業に該当するものとされています。研究会は、この席貸業の所得を申告していなかったのです。
もっとも、法人や団体がその主たる目的とする業務に関連して行う席貸業で、その法人や団体の会員その他これに準ずる者の用に供するためのもののうち、その利用の対価の額が実費の範囲を超えないものは、席貸業であっても収益事業から除かれることになっています。