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トラブルは現場で起きている!

組合員を裏切っていた漁業協同組合

2022/02/22

 静岡県の焼津は、カツオの水揚げで日本一を誇る漁港です。その焼津の漁師たちの間では以前からうわさがあり、不思議がられていました。九州で水揚げすると水揚げ量が多いのに、なぜか焼津では水揚げ量が減っているというのです。昨年、なんとそれが不思議でも何でもなく、計量係の漁協職員らによってカツオが抜き取られていたせいであったことが判明しました。

 魚の流通は、通常次のような手順で行われます。まず、漁船から水揚げされ市場に運ばれた魚は、種類や大きさによって選別されます。次に、漁業協同組合の職員が重さを計量して、水揚げ量を記録します。それから、仲買人が集まり、セリが始まります。セリ人も、漁業協同組合の職員です。セリが終われば、仲買人は競り落とした魚を販売先へ出荷します。漁師たちの給料は、漁協によって計量された水揚げ量によって歩合給で支払われます。計量が少なければそれだけ給料が減りますので、漁師たちにとっては死活問題です。

 焼津漁港に大きな衝撃が走ったのは、2021年10月のことでした。漁協職員2人と元職員1人、水産加工会社の元社長と元役員の2人、運送会社の社員2人の合計7人が、計量前のカツオを抜き取って横流ししていた窃盗容疑で焼津署に逮捕されたのです。しかも、焼津漁業協同組合では、これが慣行化して数十年以上にわたって行われていたというではありませんか。抜き取られたカツオは、換金されて漁協職員にキックバックされ、職員旅行や忘年会、新年会などの飲み会のほか、遊興費に使われていました。2012年にいったん内部告発がなされたこともありましたが、うやむやなまま追及されなかったため、カツオの抜き取りは止まりませんでした。

 漁業協同組合は、法人税法別表第三に掲げられる協同組合等に該当し、普通法人よりも税率で優遇されています。2017年3月末現在の全国の組合数は960組合、組合員数の平均は230人で、平均1万人を超える農業協同組合の組合員数に比べると大きく見劣りがしますが、漁業者数の減少に伴ってさらに減る傾向にあるといわれます。

 組合員の信頼を裏切った焼津漁業協同組合の事件は、組織ぐるみとまではいえないものの、見て見ぬふりをする組織風土に根本的な要因があったのではないかとする見方が専らです。

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