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スキルアップ税務

社長貸付金・社長借入金消去の税務 ~証拠の論点も踏まえて~③

2023/04/03

 DES について税務上の留意点、法人税法上の評価についてです。原則、課税実務では、「オーナーが会社に対し債権放棄する(会社にとっては債務免除)」と「役員給与減額⇒減額分で徐々に精算」を併用する方法が一般的です。

 しかし、一気に解消したい場合、DES や擬似DES を選択します。ただし留意点はかなり多く存在します。役員借入金を法人税法上の時価に洗替ます。この時、次のようにするのが無難でしょう。

・実態貸借対照表で実質資産超過(プラス)の場合は貸付金券面相当額
・実態貸借対照表で実質債務超過(マイナス)の場合は0 評価

 とはいえ、統一見解があるわけでもないため、課税実務で判断基準となるものを下記に列挙します。実態貸借対照表での実質債務超過状態での法人税法上の時価については、

⇒ 0 評価
…課税実務上、これが一番安全策と思われます。

⇒ 実務対応報告第6 号 デット・エクイティ・スワップの実行時における債権者側の会計処理に関する実務上の取扱い
… DCF 法(実務上)、税務でも許容される余地はあると思いますが、DCF 法自体、税理士の通常実務に遭遇しないため、適用事例は比較的少ないと思われます。

⇒ 適正評価手続に基づいて算定される債権及び不良債権担保不動産の価額の税務上の取扱いについて(法令解釈通達)
… 国税庁が了承したDCF 法です。上記と同様、DCF 法自体、税理士の通常実務に遭遇しないため、適用事例は比較的少ないと思われます。

⇒ 企業再生税制適用場面においてDES が行われた場合の債権等の評価に係る税務上の取扱いについて
… これも国税庁が了承した方法です。ただし、「時価」としか言及がないので、実務直結で利用できるものではありません。これら債権の「時価」に関しての判示がありますが、実務直結の類ではありません。

 東京地方裁判所平成19年(行ウ)第758号法人税更正処分取消請求事件平成21年4 月28日判決【DES による債務消滅益の益金算入/債権・債務の混同により生じた差額】(TAINZ コード Z259-11191)

〔要点〕
 DES による債務消滅益は、法人税法上、益金に算入する必要があるとされた事例

 本件における納税者(原告・控訴人・上告人)は、関連会社からの債権の現物出資及び同社への新株発行による同社に対する債務の株式への転化(DES)について、資本等取引に該当するものと考え、債務消滅益を益金の額に算入しないで法人税の申告をしていましたが、課税庁より、当該債務消滅益は資本等取引には該当しないとして、益金の計上漏れがあると指摘されたものです。本件における争点は、DES は資本等取引に該当するかどうかです。

 この点、地裁は、DES は①会社債権者の債務者会社に対する債権の現物出資、②混同による債権債務の消滅、③債務者会社の新株発行及び会社債権者の新株の引受けという各段階があるが、これらの取引は資本等取引に該当するとは認められないとして、納税者の主張を退けました。納税者は控訴しましたが、高裁も地裁判決を支持しました。なお、上告は不受理決定がなされています。

 下記は判示の一部を抜粋したものです。

 「そもそも債権の時価は、債務者の財務状況だけでなく、物的・人的担保の有無、利息の有無及び多寡、利息・元本の種別、返済期間、従前の支払状況等の諸要素を総合的に勘案して定まるものであり、」当該判示自体は非常に興味深いので、ぜひ原文を確認していただきたいのですが、肝心の債権の「時価」概念に対する言及は上記に留まり、課税実務で直接利用できるものとはなっていません。

(参照)
 ここでのDES は企業再生局面におけるDES について言及しておりません。あくまで役員借入金の解消目的ですから、当該借入金の法人税法上の時価を考慮する場合、下記のような企業再生局面におけるDES に係る考え方と混同しないことが肝要です。類書の企業再生の一手法で紹介されるDES の法人税法上の時価を参照「できない」という意味です。
 
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