日税グループは、税理士先生の情報収集をお手伝いします。日税ジャーナルオンライン

MENU

スキルアップ税務

社長貸付金・社長借入金消去の税務 ~証拠の論点も踏まえて~⑦

2023/06/01

1)
 役員給与、役員退職給与とも形式基準、実質基準で税務上適正額か否かの調査が行われます。「不相当に高額」という概念は典型的な不確定概念のため、「不相当に高額」という認定を避けるためのエビデンスとしての最適解や唯一解といったものは一切存在しません。しかし、最低限用意しておくべき事項はあります。

(1)役員給与

イ 形式基準
 役員給与等の決定方法については、会社法361条1項を確認します。税務調査では役員給与については形式基準よりも実質基準を重視する傾向があります。形式基準については、いつの時点から改定か、総額内に収まっているか、といった極めて単純な記載事項について確認します。
 納税者がそれを作成している場合、税理士は全てにおいてトレースが必要になります。議事録が重要なのは定期同額給与、事前確定届出給与に関して会社法を前提とした法文になっているからです。

【会社法361条】
(取締役の報酬等)

 第361条 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
 一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
 二 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法

(後略)
 極めて規模の小さい法人の場合、代表取締役からの「取締役報酬決定通知書」のような通知書だけでもエビデンスとして足ります。また、取締役会で決定する場合、「令和○年○月○日(令和○年○月〇日支給分から)」の明記が絶対に必要になります。

 書証として疎明力をより高めるため、会社法上の規制はありませんが、法務局に届けられている印を押していることが望ましいあり方です。一方、取締役会に委任した場合の取締役会議事録においては会社法上「出席した取締役及び監査役」の署名又は記名押印が求められていることから、それに従います(会社法369条3項)。

 また、定期同額給与との関係から例えば「6月25日から開始する新しい職務執行期間に係る最初の支給時期は7月末から一定」ということでも問題はありません。この要件を満たしていることを明白にするため、議事録では定時株主総会開催日から開始する新しい職務執行期間に係る最初の支給時期がいつかも明記しておくべきです。

〇報酬の限度額を間違えて記載してしまい形式基準で否認された事例
 山形地裁昭和38年(行)第2号審査決定取消等請求事件(棄却)(確定)(TAINSコードZ044-1458)

(判決要旨一部抜粋)
(2)原告は創立総会において「取締役及び監査役の報酬支出の件」が審議され、原告の将来の発展を期してこれら役員に対する報酬は各自年額50万円以内とし、その支出方法は取締役会に一任することに定められたもので、その議事録には単に、「年額50万円内」との記載があるが、これは同議事録作成の際「各自年額50万円以内」と記載すべきところ「各自」の2字を脱落して記載されたに過ぎず、従って支給限度超過額はないと主張するが、イ)右報酬の支出方法については取締役会の議決がなく、税務調査当時にはいまだ限度額の変更がなかったこと、ロ)非常勤役員3名に対し設立以来3年間は全く報酬支給がなく、他の2名の常勤役員に対し設立後3年間に支給された報酬総額はいずれも年50万円に満たなかったこと、ハ)創立総会の本議案の承認状況、ニ)関与税理士が原告会社の事業規模等から年額50万円以内との限度額の定めは役員全員に関するものとして相当であると考えていた事実、ホ)調査担当者に対する原告代表者等の答弁等の事実を総合して考えれば、原告方の限度額に関する定めは役員全員につき定められたものであると認めるのを相当とする。

 したがって、被告税務署長が3事業年度における原告の役員報酬支給総額のうち限度額50万円を超える部分をいずれも損金に算入せず、所得金額として扱ってなした本件各更正決定には何等の違法は存しない。〇報酬の限度額を間違えて記載してしまい形式基準で否認された事例(過大役員報酬/形式基準限度額)取締役会において役員ごとに定められた役員報酬の支給限度額の総額が、株主総会の決議で定められた役員報酬の総額を上回っている場合は、支給限度額が総額で定められている場合として判定することとなり、取締役会決議額を形式基準限度額とすることはできないとされた事例(平20-03-04裁決)(TAINSコードF0-2-327)

 議事録の重要性、すなわち株主総会等の開催が重要になります。無数の論点が存在するため、株主総会等の決議の取消しが争点となった事例は確認すべき事項となります。

※この内容は『日税ライブラリー研修』で詳しく学ぶことができます。詳しくはこちら。
  
『日税ライブラリー研修』では、1年間定額で豊富なテーマのセミナー動画を何度でもご覧いただけます。
 詳しくはこちら。

PAGE TOP