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スキルアップ税務

社長貸付金・社長借入金消去の税務 ~証拠の論点も踏まえて~⑲

2024/01/19

(3)不動産賃貸料

 不動産を移転(売却、事業譲渡、現物出資、分割型分割、分社型分割、株式交換、現物分配等々移転の手法は多岐にわたります。)、不動産所有者が不動産の現実利用者に貸付、賃料収入を獲得するものです。

 非常に典型的な事案ですが、外部から不動産を賃貸している場合と同様のエビデンスを一式用意します。現実論として同族法人間で行うため、何かしらの資料漏れがあることが多いです。

 関連会社間の不動産売却は当局の念査事項になります。第三者に売却したときと同じエビデンスの整理が必要です。以下の判決が各種エビデンスの整理についてヒントになる事例です。

 平成29年3月8日判決【青色申告承認取消処分/グループ法人間の不動産売買損失】(TAINS コードZ267―12989)

(4)貸付金利息

 親会社(持株会社、関連会社)で一括借り、子会社(関連会社)へ一括貸しを行い、金利について平均調達金利以上をとります。

(5)寄 附

 寄附受贈も典型事例となります。同族法人間では、当該同族法人間の利益調整のため、受発注の価格設定に合理性があるか等々が念査項目になります。

 したがって価格設定の合理性を説明できる資料が証拠となります。同族法人間の価格設定は、「経済合理性がある」か否かによって判断されるため契約書や稟議書等で形式要件だけを満たしても疎明力はないです。事実認定になります。

 第三者との取引価格=実勢価格に近いことを稟議書等で起こします。こういった価格設定は金額の重要性にもよりますが、取締役会までは議案にならないため、役員会ミーティング議事録等々でそれを承認するという流れになります。

 この実勢価格に近い、というのは、先述までさまざまな箇所で登場した第三者の見積りの累積です。結果として当該見積りの平均値あたりをとればよいことになりますが、複数の見積りがあることが原始証拠となります。

 稟議書についても雛形は先述までのものを任意に改変すればよいのですが、ここでもその結果にいたったプロセスが重要となります。詳細を施せば施すほどよいのです。

 複数の見積りと並行記載で、当該取引に関して何かしらの制限や何かしらの条件等が付されている経緯を示すことができれば、仮に取引価格と実勢価格に(多少の)乖離があったとしても経済合理性がある、と判断されます。

 同族法人間を前提としますと、A法人においては材料を安く供給する。ただし、そのかわり製品を安く販売する(バーター)、とすれば同族法人グループ全体としては明らかに経済合理性がある取引といえます。発注や納品のロット数が非常に多く、同業他社では対応不可である。同族関連法人のA法人ではそれが可能である。A法人からの仕入れは付加価値がある取引といえます。

そして、これを稟議書に明確に示します。稟議書上は、
・複数の第三者の見積りの結果として、当該見積りの平均値と
・同族関連A法人からの仕入値に乖離が生じますが、当該乖離の理由を稟議書に経緯を詳細に記載することで疎明力が高まります。

 この考え方はフリーレント設定賃料などを応用した考え方です。一 定期間、賃料が免除されますが、当然ながら寄附金に該当しません。フリーレントの代わりに(バーター)、途中解約ができないなどの制限がある、途中解約した場合は違約金が発生するといった条件があり、賃貸借期間の「総」賃料について合理性があるからです。そういった金額以前の前提として、賃借側における移転時の重複家賃を回避させれば、入居を促進させるという効果もあります。前段の理由も後段の理由もすべてにおいて経済的合理性があります。こういった経済的合理性を疎明させるために稟議書ベースにおいても詳細な経緯記載が必要になります。

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