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スキルアップ税務

社長貸付金・社長借入金消去の税務 ~証拠の論点も踏まえて~㉛

2024/07/30

2)

「税務調査手続に関するFAQ」(一般納税者向け)

問7 法人税の調査の過程で帳簿書類等の提示・提出を求められることがありますが、対象となる帳簿書類等が私物である場合には求めを断ることができますか。

【回答】 
 法令上、調査担当者は、調査について必要があるときは、帳簿書類等の提示・提出を求め、これを検査することができるものとされています。この場合に、例えば、法人税の調査において、その法人の代表者名義の個人預金について事業関連性が疑われる場合にその通帳の提示・提出を求めることは、法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるものと考えられます。
 調査担当者は、その帳簿書類等の提示・提出が必要とされる趣旨を説明し、ご理解を得られるよう努めることとしていますので、調査へのご協力をお願いします。

国税通則法調査関連通達1-5(質問検査等の対象となる「帳簿書類その他の物件」の範囲)
 法第74条の2から法第74条の6までの各条に規定する「帳簿書類その他の物件」には、国税に関する法令の規定により備付け、記帳又は保存をしなければならないこととされている帳簿書類のほか、各条に規定する国税に関する調査又は法第74条の3に規定する徴収の目的を達成するために必要と認められる帳簿書類その他の物件も含まれることに留意する。

「税務調査手続等に関するFAQ(職員用)【共通】平成24年11月 国税庁課税総括課」
問1-26
「調査の対象となる帳簿書類その他の物件」における「その他の物件」というのはどのようなものを指すのか。

(答)
 「その他の物件」とは、例えば、金銭、有価証券、棚卸商品、不動産(建物・土地)等の各種資産や、帳簿書類の(作成の)基礎となる原始記録などの当該調査又は徴収の目的を達成するために必要な物件が該当します(手続通達1-5)。
 ただし、証拠保全の観点からは、むしろ個人用、生活費用の通帳等々を見せたほうが重要な疎明力を有することもあります。典型的なのが法人と役員が金銭の貸借をしている場合などです。

税務調査において納税者側が圧倒的に不利になる致命的な資料について
 裁判例における当局側の提出した証拠が参考になります。「経済的合理性<節税目的」が全面に打ち出されている資料が証拠となったとき原則として納税者の主張は一切通りません。代表的なものとしてここでは2例挙げておきます。いずれも意図的に有名な事案をもとにしています。

(1) 土地建物の評価/節税目的で取得した不動産における評価通達6の適用の是非
 最高裁判所(第三小法廷)令和2年(行ヒ)第283号相続税更正処分等取消請求事件(棄却)(確定)令和4年4月19日判決(TAINSコードZ888-2406)
(一部抜粋、地裁)
(イ)本件乙不動産は、本件被相続人が、平成21年12月25日付けで、売主である株式会社Mから総額5億5,000万円で購入したものであった(以下、同購入額を「本件乙不動産購入額」といい、本件甲不動産購入額及び本件乙不動産売却額と総称して「本件各取引額」という。)。
 なお、本件被相続人は、同月21日付けで、訴外Eから4,700万円を借り入れた。また、本件被相続人は、同月25日付けでK信託銀行から3億7,800万円を借り入れており(当該借入れについてG、訴外E、原告A及び訴外Fが連帯保証をした。)、同銀行がその際に作成した貸出稟議書(乙14)の採上理由欄には「相続対策のため本年1月に630百万円の富裕層ローンを実行し不動産購入。前回と同じく相続税対策を目的として第2期の収益物件購入を計画。購入資金につき、借入の依頼があったもの。」との記載がある。(※下線筆者)

 上記の稟議書は金融機関への反面調査ですぐに発覚します。また、金融機関は相続対策や事業承継対策で提案書を持参することが多々ありますが、ほとんどの資料が節税効果を打ち出した資料になっており、経済的合理性、なぜ、その取引をその時に、実行する必要性があったかという、いわゆる理論武装やストーリーを用意してきません。必ず用意させることが必要です。

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