税理士業務に役立つ保険ナレッジ

生命保険金の「据置」に関する税務上の考え方

2026/09/28

1 生命保険金の「据置」とは

 生命保険契約において、死亡保険金や満期保険金の支払事由が発生した際、受取人がその時点で保険金を受け取らず、保険会社に預けたまま将来の一定時期まで据え置く「据置」という取扱いがあります。据置期間中は所定の据置利率が付利され、受取人は据置利率による運用益を得ながら、全部または一部の保険金の受取時期を選択できます。

 「据置」を利用することで、実際に保険金を受け取らなければ保険金受取による課税時期を延ばすことができるのではないかという誤解が多いです。特に、法人契約で、全員加入の養老保険を利用した従業員の退職金支払準備なのに満期時期を定年年齢に合わせずに、10年満期とかで契約している場合に多く受けるご質問です。


2 「据置」の基本的な考え方と裁決事例

 「据置」の基本的考え方は、保険金の実際の受け取りに関係なく、保険事故(満期や被保険者の死亡等)により保険金請求権がすでに発生していることにあります。その場合、問題は、いつ、課税関係が発生するかです。受け取りさえしなければ、課税時期が先送りできると考えていらっしゃる法人や個人のお客様が本当に多くいらっしゃいます。
 
 ただ、「据置」については、平成12年11月8日裁決事例集NO.60で以下のように判断されています。

 「据置契約は、本件(満期)保険金を原資として、請求人の意思によって新たに締結されたものであり、本件契約とは別個の預金契約である」「本件保険金は、本件契約の保険期間満了後、請求人側に現実に金員が支払われることなく、新たに締結した別個の契約に引き継がれたものにすぎない」とあり、満期日に「その支払を受けるべき権利が確定していることが認められる」とされます。

3 個人契約の場合

 例えば、保険料負担者=被保険者が被相続人で、死亡保険金受取人が相続人である個人契約の場合、相続税の課税対象額は被保険者の死亡時点で確定する保険金額を基準とするため、「据置」を選択したこと自体によって相続税の課税関係が変わることはありません。「据置」はあくまで「受取のタイミング」の選択であり、「課税のタイミング」を左右しない前提です。本来の死亡保険金受取の時期で課税され、実際に保険金を受け取っていなくても、死亡保険金の非課税枠の対象や相続税の基礎控除の対象になります。

4 法人契約の場合

 法人が保険金受取人となる場合、法人税法上は「権利確定主義」に基づき、保険事故が発生し、かつ保険金請求権の内容が確定した日の属する事業年度において、資産計上していた保険料積立金等を控除した残額を益金に算入しなければなりません。「据置」を選択して実際の入金を先送りしても、この益金算入の時期そのものは変わらないことは、個人契約と共通する重要な前提となります。原則、保険事故の発生日で課税され、実際に保険金を受け取っていなくても、法人税の課税対象になります。

5 さいごに

 法人契約で全員加入の養老保険を利用した従業員の退職金支払準備で、満期時期を定年年齢に合わせずに10年満期とかで契約している場合、満期日に課税される事実は変わりません。「据置」にしても、課税時期をずらすことはできません。残念ながら、「据置」には課税の発生時期そのものを繰り延べる効果はありません。その場合、その契約の約款に従い、年金特則の事前付加がされているかを確認して、事前付加がされていれば年金として利益計上を分散するしかないと思われます。

解説/追中 徳久 税理士

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