国の支援制度「年収の壁・支援強化パッケージ」とは?!
2024/04/05
従業員の年収が一定水準を超えても手取り収入が減らないよう、いわゆる「年収の壁」対策を講じた企業に対し、国が支援する制度「年収の壁・支援強化パッケージ」が昨年10月末より新たにスタートしています。
・どのような支援制度なのか?
・「年収の壁」とは?
・支援制度の背景は?
・どんなメリットがあるの?
今回は、これらの疑問を解消するために、支援制度について解説していきます。
「年収の壁・支援強化パッケージ」とは
2023年10月末より、国が「年収の壁・支援強化パッケージ」をスタートしたことはご存知でしょうか。
パートやアルバイトがいる会社では、「年収の壁」が原因で年末などの繁忙期にも従業員が労働時間を増やせず、結果として、慢性的な労働力不足に悩んでいる会社も少なくありません。
パートやアルバイトが「年収の壁」を意識しないで働けるような環境づくりを支援するためにできた制度が、「年収の壁・支援強化パッケージ」です。
「年収の壁」とは
そもそも「年収の壁」とは何でしょうか?
「年収の壁」とは、パートやアルバイトなどとして働く際に、税金や社会保険料の支払いなどの負担が新たに発生する基準です(「年収の壁」には、税務上の壁と社会保険上の壁があります)。
なかでも、106万円、130万円の「年収の壁」は、社会保険料の支払い負担が新たに発生する基準です。
手取りを減らしたくない従業員の心理が、「労働力不足」を生んでいる?
・配偶者の扶養の範囲内で働きたい従業員
・(社会保険に入っていない)パート、アルバイト
こうした方々にとっては、この「年収の壁」を境に社会保険料の自己負担額が生じ手取りの収入が減ってしまうため、「年収の壁」を意識して就業時間を抑えようとする心理が働きます(就業調整)。
そのため、配偶者の扶養範囲内で働きたい従業員や、パート・アルバイトのいる会社では、「年収の壁」が一因で、労働力不足に悩むことも…。
このような労働力不足に歯止めをかけるための一施策として国が打ち出した対策が、「年収の壁・支援強化パッケージ」です。具体的には、「106万円の壁」対策・「130万円の壁」対策があります。
それぞれ、どのような企業がどのような支援を受けられる制度なのか、具体的に見ていきましょう。
「106万円の壁」対策の支援内容
◆対象
「106万の壁」は、前述の通り、社会保険の適用事業所(従業員数101人以上)で、週20時間以上働く従業員が健康保険の加入対象となり、保険料の自己負担が発生するもので、支援の対象も従業員数が101人以上の会社です。
◆支援内容
「106万の壁」を超えても手取り収入が減らないよう、従業員の収入をアップさせる取り組みを行った企業に対し、国が労働者1人当たり最大50万円の助成をします(キャリアアップ助成金<社会保険適用時処遇改善コース>)。
◆キャリアアップ助成金<社会保険適用時処遇改善コース>の対象となる労働者
下記より、自社の従業員が助成金の対象になるかをご確認いただけます。
「130万円の壁」対策の支援内容
◆対象
「130万の壁」は、前述の通り、年収が130万以上となると配偶者の扶養から外れることになり、保険料の自己負担が発生するもので、支援の対象は従業員数が100人以下の会社です。
◆支援内容
パート・アルバイトで働く従業員の年収が「130万の壁」を越えたとしても、事業主が「繁忙期に労働時間を増やす」などしたことによる一時的なものである旨を証明すれば、対象となる従業員は、引き続き(最大2年間)配偶者の扶養となることができます。
いかがだったでしょうか。
「年収の壁・支援強化パッケージ」は、扶養の範囲内で働きたい従業員、パート・アルバイトなどを雇用している会社にとって、従業員が「年収の壁」を気にせず働けるようになる環境づくりを後押ししてくれる制度です。
企業にとっては、既存労働力の更なる活躍を後押しすることで、「人手不足」を解消してくれる、心強い支援制度でもあります。ぜひ、国の支援制度を理解し、関与先様のビジネスの加速にお役立てください。
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アドバイザー/TRIPORT社会保険労務士法人 代表社員 岡本 秀興