生命保険契約の「減額」に関する税務上の考え方(個人契約)
2026/08/21
1.はじめにー生命保険契約の「減額」とは
生命保険契約の「減額」とは、保険期間の途中で、契約者の意思により、保険金額の一部を下げる契約変更をいいます。減額を行うと、その減額に対応する部分の契約が解約されたものとして取り扱われ、保険会社から契約者に対して、減額払戻金などの返金があります。
この減額払戻金は、保険契約の「一部解約」に相当します。従って、税務上の取扱いも、基本的には全部解約(解約返戻金の受取り)に準じて考えますが、個人契約と法人契約とでは根拠となる法令・通達が異なり、さらに法人契約については令和元年の法人税基本通達改正の前後で資産計上のルールそのものが変わっているため、整理して理解する必要があります。今回は個人契約の「減額」を取り上げます。
2.個人契約における減額の税務
(1)個人契約の減額によって受け取る減額払戻金の課税関係は、保険料負担者と減額払戻金の受取人が同一人か否かによって分かれます。
すなわち、保険料負担者=減額払戻金受取人の場合は所得税(一時所得)の課税対象、保険料負担者≠減額払戻金受取人の場合は保険料負担者から受取人への贈与とみなされ、贈与税の課税対象となります。
実務では相談の大半が前者(保険料負担者=受取人)であるので、以下は一時所得としての取扱いを中心に説明します。
(2)一時所得の計算方法(所得税法第34条第2項、第3項)。
一時所得の金額は、次の算式となります。
・一時所得の金額=総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)
・総所得金額に算入されるのは、この一時所得の金額の1/2に相当する金額(所得税法第22条第2項第2号)
減額での「総収入金額」は受け取った減額払戻金の額ですが、問題は「収入を得るために支出した金額」をどう計算するかです。
(3)「収入を得るために支出した金額」とは
満期保険金や全部解約の解約返戻金であれば、「支出した金額」はその契約に係る既払込保険料の総額とします(所得税法施行令第183条第2項第2号、所得税基本通達34-4)。しかし減額の場合、契約は一部が残存し続けるため、既払保険料をどう配分するかが問題となります。
この点、既払保険料を減額した保険金額で按分する考え方がありますが、これは法人契約で用いられます。
個人契約の場合、国税庁の質疑応答事例(一時払養老保険の保険金額を減額した場合における清算金等に係る一時所得の金額の計算)では、既払込保険料のうち減額払戻金の額までを必要経費としています。
理由として、一時所得は臨時・偶発的な所得であるから、継続的収入を前提とする按分方式はなじまないこと、また生存給付金付養老保険の給付金や保険契約の転換時に責任準備金が取り崩す場合と同様に、既払保険料のうち一時金の額に達するまでの金額を「支出した金額」に算入する先取方式が用いられており、減額の場合だけ異なる扱いをする合理的理由がないことを挙げています。
<計算例>
既払保険料300万円の一時払終身保険について、保険金額を減額し、減額返戻金80万円を受け取ったケースを考える。
・実務上の取扱い:既払保険料300万円>減額返戻金80万円のため、「支出した金額」=80万円。
一時所得=80万円-80万円=0円(他に一時所得がない場合)
ただし、以降、必要経費にできる既払保険料は、300万円―80万円=220万円に減少。
このように、既払保険料に達するまでの減額払戻金には課税が生じない点が、個人契約における減額の実務上の大きな特徴です。
3.さいごに
注意しないといけないのは、特別控除の上限50万円は、必要経費としての既払保険料を使い切って初めて適用されることです。税理士は間違わないのですが、お客様の中には毎年特別控除が利用できので一時所得が発生しないと思っている方が意外に多いので、注意が必要です。
解説/追中 徳久 税理士
