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税理士が関与先の為に知っておきたい金融知識

地域分散が必須な時代、どの国がいいか聞かれた際に知っておきたい3条件

2025/05/31

 長期投資において分散投資はとても大切です。値動きの異なる複数の投資対象に分散して投資をすることや、買うタイミングを分ける時間分散も投資のリスクを抑えることに繋がります。

 そして近年、世界の分断など地政学的リスクや経済の不確実性が高まるなかで特定の国や地域に集中して投資を行うことは、大きなリスクを伴いますので地域分散投資の重要性が増しています。

 地域分散は複数の国や地域に資産を分散して投資することで、特定の国や地域の経済状況や政治リスク、自然災害などの影響を受けにくくする投資手法です。例えば、日本国内の資産だけでなく、米国や欧州、新興国など、異なる経済圏に投資を分散させることで、特定の地域の経済変動による影響を抑えることができます。また、異なる通貨での投資を行うことで、為替リスクの分散も図ることができます。ただ地域分散投資を行う際には、それぞれの国や地域の経済状況、政治リスク、為替リスクなどを十分に調査し、理解することが重要です。ではどのように分散すれば良いのでしょうか。

 個人的には長期投資すべき国は3つの条件が大切だと思います。具体的には経済成長、人口増加、資金供給量拡大が揃う国です。

 まず一つ目の経済成長はその国の経済がどれだけ拡大しているかを示す指標です。高い経済成長率を持つ国では、企業の収益拡大や新たなビジネスチャンスの増加が期待でき、投資リターンの向上につながります。

 二つ目の人口動態、特に生産年齢人口(15歳から64歳)の増加は、経済活動の活性化に直結します。人口ボーナスという言葉は有名ですが、労働力の増加は生産性の向上や消費拡大に繋がります。

 三つめの市場への資金供給量が増えていることも重要です。政府・中央銀行の金融政策・財政方針で金利の動向や財政出動方針を確認しましょう。例えば 財政政策の公共投資拡大で民間への資金流入が増えると考えられます。 中央銀行のバランスシート(資産合計)は特に量的緩和(QE)実施時に国債購入・資産購入によるマネーの供給増加で大きく膨らみます。QT(量的引き締め)はその逆です。また通貨供給量の代表的な指標(現金+預金の合計) であるM2(マネーサプライ)では経済全体にどれだけお金が出回っているかを確認できます。資金供給量が増加すると投資環境の改善や企業の資金調達が容易になるなど経済活動の促進が期待できます。現在は世界的なカネあまりであることもインフレ、株高につながっています。

 ではこの三つの要素が揃っている、注目すべき投資対象国を例示します。

 まずはNISAの投資先としても人気の米国です。長期にわたって堅調なGDP成長を継続しており、特にイノベーション投資が巨額で、AIなど成長分野やグローバルテック企業に強みがあるのみならず、消費関連銘柄など定性面の強みのあるグローバル企業も多数あります。移民により人口増加が継続していく見通しで世界最大の信用創造国家です。バランスシートは2022年から縮小していくものの今後は再び拡大基調と考えられています。

 次にインドです。インドは昨年中国を抜き、世界1番目に多い人口を抱える国となりました。世界で最も若い人口を持つ国の一つであり、労働力の供給が豊富です。この若い人口は、将来的に消費市場の拡大や労働生産性の向上につながると期待されています。所得水準の上昇や中間所得者層の増大は継続する見通しで、世界最大の消費地になる期待もあります。2014年に誕生したモディ政権は、積極的な規制緩和やインフラ整備に注力しているほか、IT、製造業、医療、エネルギーなど、成長が期待される産業が多く存在します。特にIT産業は世界的に高い評価を受けており、多くのグローバル企業がインドの技術者を採用しています。

 ただ懸念もあります。例えば米国は直近で関税政策やそれに伴う不確実性、政府支出の大幅削減、物価の上昇や景気の悪化への警戒感は継続。OECDは中間経済見通しにおいて関税政策の影響で米国の成長率を下方修正しました。

 またインドは政治的不安定さやインフラの未整備などでボラティリティの高さ(値動きの激しさ)も難しいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。長期投資で時間分散することを考えれば米国、インドの指数に投資でも良いと思いますが、気になるようでしたら例えば全世界型の投資信託(eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリーなど)は米国が約6割で日本、イギリス、フランス、カナダなどに分散投資が可能。また南半球の新興国に分散投資できるグローバルサウスの投資信託(SBI-EXE-i グローバルサウス株式ファンドなど)はインドが2割超で、ラテンアメリカやサウジアラビア、インドネシア、南アフリカなどに分散投資ができるのでそのような形で投資を検討しても良いのではないでしょうか。

 加えてさらに地政学リスクに備えたい場合はどの国でも価値を認められている実物資産である金は、政府や中央銀行の信用に依存せず信用リスクがないことやインフレに強いことで資産保全の手段として有効です。

 また、近年では中央銀行が外貨準備の分散化を目的に金の保有を増やしており、金価格の下支え要因となっています。

 以上の観点を踏まえ、長期的な投資戦略を構築する際には、経済成長、人口増加、マネー拡大が期待できる国への投資、地域分散の徹底、そしてインフレ対策としての金投資を組み合わせることが重要です。

それでは、これらのテーマについてさらに深掘りしていきましょう。

アドバイザー/三井 智映子
金融アナリスト、株式会社オフィスはる代表、日本PCサービス株式会社 社外取締役、株式会社イベントス取締役COO、「投資WEB」プロデューサー
【出演・掲載実績】
NHK・フジテレビ・テレビ東京・日本テレビ・BSフジ・テレビ大阪・ラジオNIKKEI・ダイヤモンドZAI・マイナビ・週刊フジ・日経マネー・女性セブン・SPA!・FX攻略.com・ワッグル・CLASSY・SPA!など
【著書】
『最強アナリスト軍団に学ぶ ゼロからはじめる株式投資入門 』(講談社)
『はじめての株価チャート1年生 上がる・下がるが面白いほどわかる本』 (アスカビジネス)

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