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税理士が関与先の為に知っておきたい金融知識

今年投資で気をつけるべきことは?と聞かれたら

2025/03/27

 今年投資で気をつけるべきことは?と聞かれたら?答えはズバリ「不確実性の高まり」です。

 今回は今年押さえておくべき2つの不確実性と今から考えて対処しておきたい3つの不確実性、そしてそれに対してどのような戦略を取るべきなのか簡単にまとめてみます。

 まず今年押さえておくべき不確実性はトランプ時代の不確実性の高まりです。この4年間のテーマとなりそうです。

 2024年の米大統領選挙を経て、2025年の市場は再び大きな転換点を迎えています。トランプ大統領は米国の自国利益確保に突き進む「トランプ2.0」の経済政策を推進するとしており、世界経済や国際関係において大きな変化が生じることが予想され、市場のボラティリティ(価格変動の激しさ)が増すことは避けられない状況と言えるでしょう。実際に2025年の投資環境はここまでトランプ時代の「不確実性」が意識される相場だと言えます。

 トランプ政権下では過去にも突然の関税政策や中国との貿易戦争、米連邦準備制度(FRB)への圧力など、市場を右往左往させるような政策や発言が相次ぎました。今回の政権でも貿易戦争懸念が再燃しており、トランプ氏は以前から中国に対して強硬な姿勢を取っていますが、今回のトランプ政権中枢も大統領補佐官のマイケル・ウォルツ氏や国務長官のマルコ・ルビオ氏ら対中強硬姿勢で知られるメンバーが見られます。半導体、ハイテク、製造業などへの影響は考えておいた方がよいでしょう。また今回もFRBの金融政策に対して強い影響力を行使しようとする可能性も懸念されます。

 株価や為替など、短期的に大きな変動が想定される相場ではボラタイル(値動きが激しいこと)であることを利用して短期で利益をとるように学び、トレードなどで稼ぐことはむしろチャンスが多いといえます。それが難しい場合は短期的な値動きに惑わされず、長期的な視点で資産を増やす戦略が有用でしょう。また大きな下落時に仕込めるように「長期で保有したい銘柄リスト」を作ると株式投資では役に立つのでは。ボラティリティを利用することで、安値で優良銘柄を仕込むチャンスが生まれます。またディフェンシブ銘柄(生活必需品、医薬品、公益事業など)を組み込むことも検討してはいかがでしょうか。

 もう一つ、今年押さえておくべき不確実性は世界の先行きへの不確実性、先行き不透明感です。米中対立、ロシアと西側諸国の対立、中東情勢の不安定化など世界の分断という新たな現実に直面しています。特に米中両国は経済的・軍事的覇権をめぐる対立を激化させていおり、導体産業やエネルギー政策に影響を与えるだけでなく、サプライチェーンの分断を引き起こし、企業業績や株式市場に大きな影響を及ぼす可能性があります。または米国との分断により中国、ロシア、北朝鮮が軍事的に連携した場合には台湾有事の懸念も台頭してくるでしょう。

 地政学リスクでは国際的な取引を行う企業や、原材料コストに敏感な業界が影響を受けやすいです。また、リスクが現実化することで市場全体が乱高下することもあります。

 地政学リスクを考慮して分散投資を行うことが必要です。特定の市場や資産クラスに偏らないよう、加えて地域もわけておくことでリスクを低減することができます。

 ここからは今から対処を考えるべき中長期的に意識しておくべき不確実性をお伝えします。

 まずは老後資金の不確実性です。日本でも多くの人が年金制度への信頼を失いつつありますね。「老後2000万円問題」は、少子高齢化の進行やインフレ進行で、今や2000万円では足りないと考えられています。この不確実性に備えるためには、自分自身で資産を形成する必要があります。投資はそのための重要な手段の一つです。若い方は早くから備えることで複利の力を活用できますし(つみたてNISAだと非課税でなおよし)、老後が近づいている場合でも人生100年時代ですので売買益や利回りで利益を得ることは大切だと思います。

 次にインフレによる現金の不確実性、現金の価値低下も考えておくべきリスクです。近年顕著になってきているインフレは物価の上昇によって現金の実質的な価値を減少させます。例えば、現在100万円で購入できるものが、10年後には同じ金額で購入できなくなるかもしれません。このような状況では、現金をただ銀行に預けているだけでは、実質的に資産を減らしているのと同じです。一方インフレに対抗する資産運用を行えば、資産価値を維持し、さらに増やすことが可能です。インフレ資産としては金が代表的ですが不動産や株式も「モノ」です。実物資産への投資はインフレに対抗する手段としても有効です。

 そして為替の不確実性です。貨幣の価値は国力で決まると言われたりしますが、円がずっと今の価値を保てるかはわかりません。円安になると輸入品が高くなります。例えばAppleの最新の「iPhone 16e」の価格は米国で599ドルからとなっていますが、円安の影響で日本では9万9800円からと廉価モデルと言えるのか疑問となる金額です。ほかにも日用品や食料品もインフレ×円安で高くなっていますよね。日本は貿易赤字やデジタル赤字という構造的な問題を抱えているので、円安には中長期的に備えて外貨や海外資産も持っておいた方が良いのではと思います。

 まとめると、特に今年にフォーカスをあてて投資で気をつけるべきこととしては

市場の不確実性を警戒する(貿易戦争、FRB、地政学リスク)こと、

「金(ゴールド)」をリスクヘッジに活用すること、

ボラティリティを利用して欲しい銘柄を安値で買う準備をすること、

の3つを押さえておいて欲しいです。

 そしてまだ資産形成や投資をしていない人は不確実性が高いと考えられる時代だからこそ資産を守り増やすための行動を取るべきです。そのための第一歩は、投資の必要性を理解し、行動に移すことです。

 長期的に投資を継続するうえで分散投資を心がけて、特定の銘柄、市場、資産クラス、地域に偏らないよう意識するほか、時間を味方に付けることで短期的な市場の変動にも耐えられる安定したリターンを目指すのも一考の余地があると思います。

アドバイザー/三井 智映子
金融アナリスト、株式会社オフィスはる代表、日本PCサービス株式会社 社外取締役、株式会社イベントス取締役COO、「投資WEB」プロデューサー
【出演・掲載実績】
NHK・フジテレビ・テレビ東京・日本テレビ・BSフジ・テレビ大阪・ラジオNIKKEI・ダイヤモンドZAI・マイナビ・週刊フジ・日経マネー・女性セブン・SPA!・FX攻略.com・ワッグル・CLASSY・SPA!など
【著書】
『最強アナリスト軍団に学ぶ ゼロからはじめる株式投資入門 』(講談社)
『はじめての株価チャート1年生 上がる・下がるが面白いほどわかる本』 (アスカビジネス)

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