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税理士が関与先の為に知っておきたい金融知識

金利と株価の関係

2025/04/11

 今回は私たちの資産構築において重要な「金利と株価の関係性」についてお伝えします。金利の変動は企業の資金調達コストや消費者の購買意欲に影響を及ぼし、その結果、株式市場にも大きな影響を与えます。

 まず金融政策の決定により、短期金利と長期金利が変動します。日本の中央銀行である日本銀行は景気の安定と物価のコントロールを目的として金融政策を行うわけですが、政策金利の変更では利下げは景気を刺激(緩和的な金融政策)、利上げはインフレ抑制(引き締め的な金融政策)のために行われるのが一般的です。また量的緩和(QE)は市場に資金を供給して金利を低下させ、量的引き締め(QT)では市場から資金を吸収し、金利を上昇させることになります。

 ざっくり「金利と株価は逆相関」=金利が上がる局面では株価は下がりやすく、金利が下がる局面では株価は上がりやすいと理解しておいてください。

 政策金利(FF金利など)が上がると企業の借入コストも上昇し、利益が圧迫されやすくなります。加えて金利上昇で債券の利回りが上がると、リスクの高い株式よりも安全な債券に資金が流れやすくなり株式の魅力が相対的に低下します。株式市場から資金が流出して株価の下落要因となります。反対に金利が下がると企業の借入コストが減少するため設備投資が活発化すると同時に消費者のローン金利も低下するため消費が増加し、企業の売上増で株価上昇要因になります。特に将来の利益の現在価値が高まるためPER(株価収益率)が上昇することでグロース株(ハイテク・ITなど)が恩恵を受けやすいです。

 さて、では足元で日本はどうなっているのでしょうか。これまで日本は長期にわたる超低金利政策を続けてきました。2013年以降日本の中央銀行である日銀は異次元の金融緩和を実施し、長期にわたってマイナス金利政策や長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を維持してきました。ただ近年アメリカのFRBや欧州のECBなど海外の中央銀行が相次いで利上げを実施し日本との金利差も拡大。日本でも原材料価格の上昇や円安などの影響で、日本の消費者物価指数(CPI)は上昇し(3月21日発表の2月CPIは3.7%)長年続いたデフレ時代からインフレ時代に変化の時を迎え、2024年3月に日銀はついにマイナス金利政策を解除。17年ぶりに利上げに踏み切りました。

 24年7月31日の日銀金融政策決定会合では政策金利を0.25%とする追加利上げを決定したことで日経平均は連日で急落 (米市場も下落していますが日銀の決定も下落の大きな要因に)。週明け8月5日の東京株式市場で日経平均株価の下げ幅が一時4753円と史上最大を更新したことを覚えている方もいらっしゃるのでは。このように想定より急速な利上げは株価の急落につながることもあります。

 日銀は25年1月の金融政策決定会合で政策金利を0.5%に引き上げ、3月会合では政策金利を0.5%で維持することを全会一致で決定しています。日銀の利上げ継続の可能性が折り込まれてきており、3月に日本の長期金利は15年9カ月ぶりに1.5%に上昇しました。利上げ局面では株価は軟調になりやすいですが、銀行の貸出金利を押し上げ、利ざや拡大が期待されるため銀行株には追い風です。日米の金利差が縮小すると円高要因となり円高の恩恵を受ける企業や低PER・高配当のバリュー株がより注目される可能性もあります。

 とはいえ先進国で利上げに転じているのは日本株だけなので日経平均は冴えない値動きが継続していると言えます。

 ちなみにECB(欧州中央銀行)は3月6日に5会合連続となる0.25ポイントの利下げを決定。ドイツのDAX指数はは過去最高値を更新しました。FRB(米連邦準備制度理事会)は3月のFOMCで政策金利を4.25~4.50%で据え置きました。ドットチャートによると、2025年には0.5%の利下げが見込まれており、バランスシートの縮小もペースを和らげ、市場への配慮を示した模様です。

 このように金利と株価の関係を理解することは、投資判断の精度を高める上で不可欠な視点です。もちろん足元ではトランプ大統領の貿易関税なども意識されており金利だけが株価の決定要因ではありませんが、金利と株価の関係性を押さえておくだけでも、マーケットの動きへの対応力が大きく変わってきます。多くの情報に惑わされることなく、自分の判断軸を持つためにも、ぜひ今回のポイントを頭の片隅に置いておいてください。今後の投資判断の一助となれば幸いです。

アドバイザー/三井 智映子
金融アナリスト、株式会社オフィスはる代表、日本PCサービス株式会社 社外取締役、株式会社イベントス取締役COO、「投資WEB」プロデューサー
【出演・掲載実績】
NHK・フジテレビ・テレビ東京・日本テレビ・BSフジ・テレビ大阪・ラジオNIKKEI・ダイヤモンドZAI・マイナビ・週刊フジ・日経マネー・女性セブン・SPA!・FX攻略.com・ワッグル・CLASSY・SPA!など
【著書】
『最強アナリスト軍団に学ぶ ゼロからはじめる株式投資入門 』(講談社)
『はじめての株価チャート1年生 上がる・下がるが面白いほどわかる本』 (アスカビジネス)

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