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相続・事業承継Vital Point of Tax

過少申告は意図的? 関与税理士に相続財産の共済契約を伝えず

2021/03/22

 請求人の義母Fは生前、G農業協同組合との間で、自らを共済契約者および被共済者とし、各建物更生共済契約を締結していたほか、G農協において普通貯金1口座、定期貯金12口座と出資金を有していた。

 平成27年2月にFが死亡し、請求人がFの権利義務を相続した(相続人は請求人のみ)。

 同年8月14日、請求人はFの各共済契約について、本件相続の開始日における解約返戻金相当額等が記載された「解約返戻金相当額等証明書」を取得。また、Fの各貯金口座を解約し、その払戻金を請求人が新たに開設したG農協J支所の請求人名義の普通貯金口座に振り込むように記載した「相続手続依頼書」を提出した。さらに、各貯金口座に係る本件相続の開始日現在における各貯金残高が記載された「相続貯金等残高証明書」の発行を依頼した。

 同月17日には、同年6月6日に共済期間が満了した契約について、共済金100万円と税引後の割戻金1万2297円の合計101万2297円の支払請求手続を行って支払いを受けた上、満期共済金の額に相当する金員を本件請求人口座に入金した。また、各継続共済契約について、共済契約者および被共済者を請求人に変更する手続きを行った。

 同月21日、本件各貯金口座が解約されて払戻金が請求人口座に入金されたほか、本件貯金等残高証明書を受領した。出資金については23万4022円が払い戻され、平成28年6月21日に請求人口座に入金された。

 請求人は法定申告期限までに相続税を申告したが、原処分庁が相続税の調査を行い、土地の評価誤りのほか、各共済契約に係る権利および出資金が申告漏れとなっていることを指摘。請求人は修正申告書を提出したが、原処分庁が過少申告加算税および重加算税の賦課決定処分を行ったことで争いとなった。

 争点は、請求人に通則法第68条第1項に規定する隠ぺいまたは仮装の行為があったか否か。

審判所は重加算税を取消し 決め手は返戻金の入金口座

 請求人は、「本件各財産が相続財産に当たるとの認識に欠け、税理士に提示することを失念していた」と主張。

 一方の原処分庁は、「請求人が各共済契約について、①関与税理士からの指示に基づき「解約返戻金相当額等証明書」を取得した②被共済者等の名義を請求人に変更した③出資金の払戻請求を行った―などの手続きをする一方で、関与税理士に各共済契約や出資金の存在を一切伝えなかったのは、国税通則法第68条第1項《重加算税》に規定する隠ぺいまたは仮装の行為に該当する」とした。

 これに対して審判所は「、請求人が行った手続等は、建物更生共済契約の共済契約者が死亡した場合において、その建物を承継する相続人が通常行う手続きと外形上何ら異なることがない」と指摘。さらに、「各共済契約のうち満期共済契約の返戻金および出資金の返戻金について、原処分庁が容易に把握できないような他の金融機関や請求人以外の口座に入金したのではなく、相続財産として申告されている貯金の解約金の入金口座と同一の口座に入金しており、原処分庁の発見を困難にするような意図や行動をしていない」とした。

 出資金についても同様の対応をしており、「請求人が関与税理士に各共済契約および出資金の存在を一切伝えなかったとしても、請求人が当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づく過少申告をしたとは認められない」と判断。請求人に隠ぺいまたは仮装の行為があったとは認められないとして原処分庁の処分を一部取り消した。(平成30年10月2日裁決)

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