日税グループは、税理士先生の情報収集をお手伝いします。日税ジャーナルオンライン

MENU

相続・事業承継Vital Point of Tax

22年度中小企業白書 中小企業のM&Aは過去最高4280件

2022/07/13

 2022年版中小企業白書(以下、白書)では、経営者の高齢化にともなう事業承継・M&Aについて分析している。

 経営者年齢のピーク(最も多い層)を見ると、2000年には「50 歳~54歳」だったが、2015 年には「65歳~69歳」となってお り、経営者の高齢化が年々進んできている。ただ、2020年を見ると、「60歳~64歳」「65歳~ 69歳」「70歳~74歳」に分散しており、これまでピークを形成していた団塊世代の経営者が、事業承継や廃業などによって経営者を引退していることがうかがえる。

  一方で、70歳以上の経営者の割合は2020年も高まっていることから、白書では「経営者年齢の上昇にともない、事業承継を実施した企業と実施していない企業に二極化している」と分析している。 2021年の休廃業・解散件数は4万4377件で、昨年よりは減少した ものの依然として高水準の結果となった。白書では「休廃業・解散件 数増加の背景には、経営者の高齢化が一因にあると考えられ、引き続き、こうした状況への対応は喫緊の課題」と指摘しており、実際、2013 年には60.4歳だった経営者の平均年齢は、2020年には62.5歳となり、この7年で2歳も上昇している。

 経営者の高齢化とともに休廃業する大きな要因となっているのが後継者の不在だ。2021年の後継者不在割合は61.5%と6割を超えている。ただ、その割合は2017年 の66.5%をピークに微減傾向にあり、M&Aを活用して第三者へ事業を承継するなど、自社の後継者問題を解決するところが少しずつ出てきている。

  特に、中小企業でも事業承継の選択肢としてM&Aに対する関心度は年々高まっており、㈱レコフデータの調べによると、2021年における中小企業のM&A件数は過去最高の4280件。これはあくまで公表されている件数であり、M&A について未公表のものも一定数存在することを考慮すると、日本国内におけるM&Aはさらに活発化していることが推察される。

 こうした状況からM&A支援機 関も年々増加傾向にあるが、白書では「十分な知見・ノウハウなどを有しないM&A支援機関の参入も懸念されつつある」として、これに対する中小企業庁の取り組みとして2021年8月に「M&A支援 機関登録制度」を創設し、中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤の構築に取り組んでいることを紹介している。中小企業が M&Aにおいて外部のサポートを受ける際には、まず、M&A支援機 関に登録しているかどうかを確認すべきだろう。

 企業を売却する際の相手先企 業の探し方としては、金融機関や 専門仲介機関に探索を依頼するほか、自社で独自に探索するという回答が多いが、「公認会計士や税理士などに紹介を依頼する」という回答も複数回答ではあるが4番目に多い19.7%となっている。

 売り手としてM&Aを実施する際の障壁としては「経営者としての責任感や後ろめたさ」が最も高く、「相手先(買い手)が見つからない」や「仲介等の手数料が高い」といった実務的な障壁の割合も高くなっており、白書では「売り手としてのM&Aを支援する仕組みのさらなる充実が期待される」としている。

PAGE TOP