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最高裁判決の補足意見を受けて通達改正

2020/09/08

 令和2年3月24日付の最高裁判決を受け、所得税基本通達59-6《株式等を贈与等した場合の「その時における価額」》の明確化を図るための改正がこのほど行われた。

 この裁判は、同族会社のオーナーが、相続税対策で関連会社に譲渡した自社株式の譲渡価額について、譲受人が少数株主であることなどを理由に配当還元方式による価額としたところ、税務当局が「低額譲渡」に当たるとして更正処分等をしたことから争われていた事案。

 最高裁は、東京高裁が下した納税者勝訴の判決を破棄し、さらに審理をさせるため東京高裁に差戻す判決を言い渡したが、判決の補足として、国税庁の通達は、「法規命令ではなく、(中略)下級行政庁は原則としてこれに拘束されるものの、国民を拘束するものでも裁判所を拘束するものでもない。(中略)通達は一般にも公開されて納税者が具体的な取引等について検討する際の指針となっていることからすれば、課税に関する納税者の信頼及び予測可能性を確保することは重要」。そのうえで、通達の公表は(中略)公的見解の表示に当たるが、「所得税法に基づく課税処分について、相続税法に関する通達の読替えを行うという方法が、国民にとって分かりにくいことは否定できない」と指摘。このため、「より理解しやすい仕組みへの改善がされることが望ましい」としていう意見が付けられていた。

 そこで、記載内容を明確化させるために改正が行われているが、これまでの通達の取扱いが変更されるわけではないので留意したい。法第59条《 贈与等の場合の譲渡所得等の特例 》 関係の改正は次のとおり(アンダー ラインを付した箇所が改正部分)。

<改正前>
59-6法第59条第1項の規定の適用に当たって、譲渡所得の基因となる資産が株式(株主又は投資主となる権利、株式の割当てを受ける権利、新株予約権(新投資口予約権を含む。以下この項において同じ。)及び新株予約権の割当てを受ける権利を含む。以下この項において同じ。)である場合の同項に規定する「その時における価額」 とは 2335 共-9に準じて算定した価額による。この場合、2335共-9の⑷ニに定める「1株又は1口当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」とは、原則として、次によることを条件に、昭和39年4月 25 日付直資 56 ・直審(資) 17 「財産評価基本通達」(法令解釈通達)の 178から189-7まで《取引相場のない株式の評価》の例により算定した価額とする。

⑴財産評価基本通達 188 の⑴に定める「同族株主」に該当するかどうかは、株式を譲渡又は贈与した個人の当該譲渡又は贈与直前の議決権の数により判定すること。

⑵当該株式の価額につき財産評価基本通達179の例により算定する場合(同通達189-3の⑴において同通達179に準じて算定する場合を含む。)において、株式を譲渡又は贈与した個人が当該株式の発行会社にとって同通達188の⑵に定める「中心的な同族株主」に該当するときは、当該発行会社は常に同通達178に定める「小会社」に該当するものとしてその例によること。

<改正後>
59ー6法第59条第1項の規定の適用に当たって、譲渡所得の基因となる資産が株式(株主又は投資主となる権利、株式の割当てを受ける権利、新株予約権(新投資口予約権を含む。以下この項において同じ。)及び新株予約権の割当てを受ける 権利を含む。以下この項において同じ。)である場合の同項に規定する「その時における価額」2335共-9に準じて算定した価額による。この場合、2335共-9の⑷ニに定める「1株又は1口当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」 については 、原則として、次によることを条件に、昭和 39 年4月 25 日付直資 56 ・直審(資) 17「財産評価基本通達」(法令解釈通達)の 178 から 189 -7まで《取引相場のない株式の評価》の例により算定した価額とする。

⑴財産評価基本通達178188188-6、189-2、189-3及び 189-4中「取得した株式」とあるのは「譲渡又は贈与した株式」と、同通達 185189―2、189-3及び189-4中「株式の取得者」とあるのは「株式を譲渡又は贈与した個人」と、同通達188 中「株式取得後」とあるのは「株式の譲渡又は贈与直前」とそれぞれ読み替えるほか、読み替えた後の同通達 185ただし書、189-2、189-3又は 189-4において株式を譲渡又は贈与した個人とその同族関係者の有する議決権の合計数が評価する会社の議決権総数の50 %以下である場合に該当するかどうか及び読み替えた後の同通達188 の⑴から⑷までに定める株式に該当するかどうかは、株式の 譲渡又は贈与直前の議決権の数により判定すること。

⑵当該株式の価額につき財産評価基本通達179の例により算定する場合(同通達 189-3の⑴において同通達 179 に準じて算定する場合を含む。)において、 当該株式を譲渡又は贈与した個人が当該譲渡又は贈与直前に当該株式の発行会社にとって同通達188の⑵に定める「中心的な同族株主」に該当するときは、当該発行会社は常に同通達178に定める「小会社」に該当するものとしてその例によること。

法第59 条《贈与等の場合の譲渡所得等の特例》関係 (株式等を贈与等した場合の「その時における価額」)の新旧対照表はこちら

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