フィンテックによる金融イノベーションを推進 ~金融レポートより~
2016/10/20
近年、世界的に注目を集めているフィンテック(FinTech)。フィンテックとは、金融の「ファイナンス(Finance)」と技術の「テクノロジー(Technology)」を組わせた造語で、最近では、金融分野に強いITベンチャー企業を表す言葉としても用いられている。
金融庁が平成28年9月にまとめた「平成27事務年度 金融レポート」の中でも、「IT技術の進展による金融業・市場の変革への戦略的な対応」として、フィンテックの現状や課題を取り上げている。
それによると、「海外、特に欧米では、FinTech 企業に対する投資が拡大しているほか、アジアの主要新興国等でも、活発な展開が見られる」、「今後は、人工知能によるビッグデータ解析を活用した融資審査、電子モール市場の取引情報を活用した出店者向け融資、クラウドファンディングといった投融資分野や、保険分野での活用等、より幅広い金融分野への更なる広がりも想定される。また、仮想通貨等、ブロックチェーン技術等の新たな金融技術を活用した金融サービスも登場している」と分析。
しかし、その一方で、「日本においては、少なくとも現段階では、世界を視野に入れた先進的なFinTech ベンチャー企業が続々と登場している状況にはなっていない」とし、「FinTech を通じた新しい金融サービスの多くが、革新に挑戦する数多くの試行錯誤から産み出されることを踏まえ、このような取組みが活かされていくような環境の整備も重要な課題となっている」と見ている。
とはいえ、日本国内でもフィンテックによる金融イノベーションの推進に向けた取組みはすでに行われている。例えば、内外の有識者からなる「フィンテック・ベンチャーに関する有識者会議」を設置するほか、平成27年12月には、フィンテックに関する民間事業者の相談等に一元的に対応する窓口として、金融庁に「FinTech サポートデスク」を設置。ここでは、フィンテック企業からの相談に応じて、事業実施の支援を行うとともに、フィンテックに関するビジネス動向や事業者のニーズの把握を進めることで、得られた情報をもとに、事業者の抱える課題を把握し、金融庁の取組みの改善に向けた検討に活用している。
サポートデスクの開設後、総計91 件の問合せが寄せられている(平成28年6月末時点)。このうち、事業計画に基づいた法令解釈に係る具体的な相談が8割弱(70 件)を占めており、金融レポートでは、「金融規制の理解がFinTech企業にとって事業実施のハードルとなっていることが窺われる」と分析している。
金融庁では、サポートデスクを通じて、「引き続き事業者の実情把握や支援を進めるとともに、新しいサービスを提供しようとする事業者の視点に立ち、より能動的な取組みを強化・推進していく」としている。