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事業承継、新事業の展開etc 中小企業のM&Aの実態

2018/07/27

 2018年版の中小企業白書(以下、白書)によると、中小企業の経常利益は過去最高水準で、景況感は改善傾向にある一方、大企業との生産性格差は拡大していると指摘。中小企業の生産性を向上させ、大企業との格差を埋める“鍵”として、白書では「業務プロセスの見直し」や「ITの利活用」などについて分析しているが、近年の動きとして注目したいのが、「M&A を中心とする事業再編・統合」を通じた労働生産性の向上だ。

 白書によると、中小企業においてM&Aを実施したことがある企業の割合は11.6%(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)調査)。全体的に多くはないものの、(株)レフコデータの調べによると、日本企業のM&Aの件数は2017年に3000件を超え、過去最高となっている。

 中小企業のM&Aの実施状況は、公表されていないことも多く、データの制約も大きい。そこで、中小企業のM&Aを手掛ける東証一部上場3社の成約組数を調べたところ、2012年(157件)に比べ、2017年(526件)は3倍超となっている。中小企業のM&Aは、仲介機関を介さないケースも多く、白書では総じて「増加傾向にある」と推察している。

 M&Aの目的を相手先経営者の年齢別に見てみると、「60歳代」や「70歳代以上」の場合、「事業の承継」を目的とする割合が最も高く、後継者不在の企業でM&Aが活用されていることがうかがえる。他方、経営者年齢が「40歳代以下」の場合は、「事業の成長・発展」を目的とした割合が、他の年代よりも高くなっており、新事業への展開など企業の成長戦略としてM&Aが活用されている。

 白書では、M&Aを検討したものの、実施しなかった企業についても分析している。「M&Aを実施していないが検討した」という中小企業は15.6%(三菱UFJリサーチ&コンサルティング㈱調査)。このうち、交渉まで進んだ割合は24.4%に過ぎず、検討しただけで具体的な交渉まで至らなかった企業が大半を占めている。その理由としては、「判断材料としての情報が不足していた」が最も多く、次いで「効果がよく分からなかった」、「相手先が見つからなかった」と続いている。


M&A交渉時の相談相手 1位は「公認会計士・税理士」

 
確かに、情報面の不足については、大企業と異なり、中小企業の多くは企業情報を公開していないことも多く、買い手側が、売り手側の詳しい企業情報を入手することは困難といえる。また、企業が特定されないように企業概要を簡単に要約した「ノンネーム情報」だけで判断するのも難しいだろう。そこで、白書では、「金融機関や士業専門家といった周囲の支援機関が適宜企業に助言をしていくことが重要であり、そのためにも、周囲の支援機関がM&Aへの理解を深める必要がある」と指摘している。


 実際、M&Aの交渉時の相談相手を見てみると、トップは「公認会計士・税理士」で、特に「相手先を直接売り込まれた」、「自社で相手先を見付けた」という企業では、その傾向が顕著だ。他方で「相談相手はいない」という企業の割合も高く、白書では、「相手先とのM&A実施を直接交渉する場合に、相談相手がいないことも課題になっている」、「交渉時においても、公認会計士・税理士などの士業専門家や金融機関といった周囲の支援機関の役割が重要」との見方を示している。

 成長を目指す中小企業と、後継者不在の中小企業――、双方を結び付けていくことは、深刻な人手不足の問題を解消する上でも、これからの日本経済において重要な課題といえるだろう。白書では、M&Aの分析の終わりに「M&Aについての理解が、中小企業やその支援機関に広まるとともに、より多くの企業のニーズがマッチングされ、M&Aを通じた中小企業の生産性向上につながっていくことを期待したい」と結んでいる。

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