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会計検査院 消費税の簡易課税制度を適用した 課税売上高が多額な法人を検査

2026/03/06

 会計検査院はさきごろ、令和6年度決算検査報告を公表し、その中で、消費税の簡易課税制度を適用している法人のうち、課税期間における課税売上げが多額となっている法人について実施した検査結果をまとめている。

吸収合併等で大規模法人から事業を承継しても簡易課税制度は適用可能

 消費税には、課税売上げに係る消費税額から実際の課税仕入れに係る消費税額を控除して算出する本則課税のほか、特例として、中小事業者の事務負担に配慮し、みなし仕入率(事業区分別に90%~40%)を用いて納付消費税額を算出する簡易課税制度がある。本則課税と簡易課税制度の税額には、差額(消費税差額)が生じ得るが、課税売上げ等が大きくなるほど、また、みなし仕入率が課税仕入率を上回るほど、その差額は増加する。

 簡易課税制度は、原則として、基準期間における課税売上高が5000万円以下の課税期間について適用することができる。しかし、例えば、簡易課税制度を適用できる規模の小さな法人が、吸収合併・新設合併または吸収分割により、簡易課税制度を適用できない規模の大きな法人から事業の全部または一部を承継し、課税売上げが多額となったとしても、その多額の課税売上げを有する期間が基準期間となるまでの間は、簡易課税制度を適用することが可能となっている。

 実際、納付消費税額が低額となっている簡易課税制度適用者の中には、吸収合併や吸収分割により事業を承継した法人や、上場企業の法人などが設立した新設法人で多額の課税売上高を有する規模の大きな事業者が含まれており、会計検査院は平成24年10月に国会および内閣への報告の中で、すでにその点を指摘していた。

 現在も同様の事業者が存在する可能性があることから、今回、会計検査院は有効性等の観点から、簡易課税制度を適用している法人のうち課税期間における課税売上げが多額となっている法人について検査を実施した。

本則課税との消費税差額が2期分で1億8610万円に上る事例も

 検査は、令和3年度または4年度に簡易課税制度を適用しており、かつ、課税売上高が1億円を超えている延べ4796法人を対象に行われた。そのうち、元年度から4年度までの間に合併または分割を行っていた延べ172法人について分析したところ、被合併法人または分割法人の基準期間に対応する期間における課税売上高等が5000万円を超えており、仮に新設分割承継法人と同様、基準期間における課税売上高以外の指標を考慮して適用の可否を判定した場合、簡易課税制度を適用できない法人は延べ 141法人に上ることが判明した。

 このうち、推計した消費税差額(推計消費税差額)を算出可能な延べ116法人についてみると、簡易課税制度を適用したことにより、本則課税に比べて納付消費税額が低額となっていた法人は延べ105法人、その推計消費税差額は計22億9214万円に及んでおり、推計消費税差額が1億円を超えている法人も延べ3法人あったことが報告されている。

 会計検査院は、こうしたスキームを利用した事例を紹介している。それによると、A法人は、令和3年12月に100%子会社としてB法人を設立し、4年4月に事業の一部を吸収分割により分割した分割法人。吸収分割により事業を承継した吸収分割承継法人であるB法人の吸収分割後最初の課税期間(分割1期目)の課税売上高は61億余円、翌課税期間(分割2期目)は62億余円となった。B法人は分割1期目には基準期間がなく、分割2期目における基準期間の課税売上高は6万円であり、B法人は両課税期間において簡易課税制度を選択、適用して申告を行った。

 仮に、A法人が4年4月に事業の一部を分割してB法人を設立していた場合、B法人は新設分割承継法人となる。そうなると、B法人の分割1期目および分割2期目については、A法人の基準期間における各課税売上高(65億余円、61億余円)を考慮して簡易課税制度の適用を判定することになるため、B法人は簡易課税制度を選択して適用することはできなかった。その推計消費税差額は、分割1期目が9520万余円、分割2期目が9090万余円で、合計1億8610万余円となっていた。

 また、会計検査院は、吸収分割承継法人の設立の日の翌日から事業を承継した日までの期間についても検査を行った。新設分割は、事業を分割により設立する法人に承継させることをいい、吸収分割は、事業を分割した後に他の法人に承継させることをいう。すなわち、設立の日よりも後に事業を承継した法人は、吸収分割承継法人に該当し、吸収分割承継法人の基準期間における課税売上高で簡易課税制度の適用の可否を判定する。

 そこで、分割法人の基準期間に対応する期間における課税売上高等が5000万円を超えている吸収分割承継法人延べ61法人(令和3、4年度に簡易課税制度を適用し、課税売上げが1億円超の吸収分割承継法人の12法人〔重複分〕を除いた数)をみると、法人設立の日の翌日から半年以内に事業を承継していたことが把握できたのは29法人で、中には設立の日の翌日から41日で事業を承継している法人も確認された。

消費税の納税義務を判定する指標で簡易課税制度の適用について分析

 さらに、会計検査院では、簡易課税制度において用いる指標以外の指標を用いた場合の簡易課税制度の適用についても分析した。基準期間における課税売上高以外の指標には、簡易課税制度において用いる指標のほか、消費税の納税義務の判定における次の2つの指標があり、それらの指標を用いた場合の簡易課税制度の適用について分析した。①判定対象者(基準期間がない法人のうち事業年度開始の日において特定要件に該当している法人を支配している他の者等)の基準期間に相当する期間における課税売上高、②特定期間における課税売上高等。

 ①については、基準期間がない延べ243法人のうち、指標に係る課税売上高があることを把握できた法人は延べ75法人。このうち、推計消費税差額を算出可能な延べ62法人のすべてにおいて、本則課税に比べて納付消費税額が低額となっており、その推計消費税差額は計5億8456万円。これらの大半は判定対象者が1者で、発行済株式等の100%を保有することにより支配されている法人であった。

 ②については、特定期間における課税売上高または給与等の金額の合計額が、いずれも5000万円を超えていた延べ48法人のうち、推計消費税差額を算出できた延べ31法人のすべてにおいて本則課税に比べて納付消費税額が低額となっており、その推計消費税差額は計3億1143万円となっていた。

 今回の会計検査院の検査で、重複分を除くと、簡易課税制度を適用した結果、本則課税に比べて納付消費税額が低額となっているのは延べ185法人、その推計消費税差額は計29億78万円に上った。

 これらの状況を踏まえ、会計検査院は財務省に対し、多額の課税売上げを有する法人における消費税の簡易課税制度の適用について、簡易課税制度が中小事業者の事務負担に配慮して設けられている趣旨等も含めて、様々な視点からより適切なものとなるように検討を行っていくことを求めた。

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