平成29年度査察概要 実刑判決では過去最高の懲役7年6カ月
2018/06/18
国税庁はこのほど、平成29年度における査察の概要を公表した。
それによると、平成29年度中に処理(検察庁への告発の可否を判断し処理)した査察事案は163件(前年度193件)。そのうち検察庁に告発した件数は113件(同132件)で、告発率は69.3%(同68.4%)。脱税額は総額で135億900万円(同161億600万円)となり、そのうち告発分は100億100万円(同126億9200万円)、告発した事案1件当たりの脱税額は8900万円(同9600万円)だった。
告発事案を税目別にみると、「法人税」が61件、脱税額は56億4500万円。「所得税」は19件で、脱税額は19億5000万円。「消費税」は27件で、脱税額は17億6800万円(このうち11億4000万円は消費税受還付事案(ほ脱犯との併合事案を含む)の脱税額)。「相続税」は3件で、脱税額は3億8700万円。「源泉所得税」は3件で、脱税額は2億5100万円となった。告発件数の多かった業種のトップは26件の「建設業」。次いで、「不動産業」が10件、「人材派遣」が5件となっている。
平成29年度の告発事例は以下のとおり。
【消費税受還付事案】
化粧品の輸出等を行うA社は、取引事実が無いにもかかわらず、国内の業者からの架空仕入(課税取引)および国外の業者への架空輸出売上(免税取引)を計上する方法で、不正に多額の還付を受けていた。
【無申告ほ脱事案】
インターネットを利用してコンサートチケット等の販売を行うBは、他人名義でコンサートチケット等の仕入や販売を行うとともに、売上代金を他人名義の預金口座に送金させるなどの方法で所得を秘匿し、所得税の申告を行わず多額の所得税を免れ、不正資金を現金で留保するほか、高級外車の取得費用に充てていた。同事例では、デジタルフォレンジックツールを使用してメールデータなどを把握し、事業実態等の解明をすることができた。
【国際事案】
工業製品のデザイン等を行うC社は、国外の外注先に対する外注工賃(不課税取引)を、国内の不正加担先に対する外注工賃(課税取引)に仮装する方法で、不正に多額の消費税を免れるとともに消費税の還付を受けていた。
【近年の経済社会情勢に即した事案】
太陽光発電システムの販売を行うD社は、不正加担者に対する架空外注費を計上し送金後、不正加担者から現金を戻させるなどの方法により、所得を過少に申告して多額の法人税を免れ、不正資金をD社の出資金や代表者の自宅取得費用に充てていた。
平成29年度中に一審判決が言い渡された件数は143件で、すべてに有罪判決が出され、そのうち8人に実刑判決が下された。実刑判決のうち最も重いものは、査察事件単独に係るものでは過去最高となる懲役7年6月だった。
【平成29年度中に実刑判決(懲役7年6月)が出された事例】
Eは、実質経営する会社3社において、グループ会社の在庫商品である高級腕時計を利用し、腕時計を何度も国内と国外で循環させる方法で、架空の国内仕入(課税取引)および架空の輸出売上(免税取引)を計上し、不正に多額の消費税の還付を受けていた。Eは、これらの会社や関係会社の消費税法および地方税法違反の罪で、懲役7年6月の実刑判決を受けた。