日税グループは、税理士先生の情報収集をお手伝いします。日税ジャーナルオンライン

MENU

税務ニュースTaxation Business News

第48回日税連公開研究討論会を都内で開催

2022/10/28

 日本税理士会連合会および東京税理士会は10月7日、東京・新宿区の京王プラザホテルで「第48回日税連公開研究討論会」を開催した。公開研究討論会は、会員による研究成果の発表・討論の過程を通じて、税制、税務行政および税理士業務の改善・進歩ならびに税理士の資質の向上を図るとともに、日本税理士会連合会が行う研修事業に資することを目的としたもの。今回は東京税理士会が担当会として研究成果を発表した。昨年の公開研究討論会は、新型コロナウイルスの感染防止のためにライブ配信で行われたが、今年は会場参加型とライブ配信による『ハイブリッド形式』で開催された。

第一部テーマ 「税制の歪みを糺(ただ)す」

 第一部のテーマは「税制の歪みを糺(ただ)す」。まず、第1班が「デジタル化社会における税制のあり方」として、適正な税の転嫁を行うためには、書面のインボイスではなく、デジタルインボイスが不可欠であることを指摘。そして、インボイスの提供者や受領者ごとに仕様が異なるのではなく、データの内容や単位について互換性を持たせ、相互同時にデータの交換、蓄積、分析、整理、活用が可能となるようにデータの意味を揃えていく「データの標準化」の重要性について解説した。
 また、役員退職給与について同業類似法人の情報の入手が困難であることを例に取り上げ、租税行政庁のほうが納税者よりも多くの情報を持っている逆パターンの情報の非対称性(税制の歪み)については、税務情報の利活用・オープン化で解決すべきであり、その部分への税理士の関与を税理士法に基づく権利として確立することを求めた。
 次に、第2班からは経済事象の多様性に対応した税制の改革としてシェアリングエコノミー取引の課税制度のあり方に関する研究成果が報告された。
 シェアリングエコノミーを提供しているプラットフォームの例や市場規模を紹介し、新しい経済事象に税制が対応していない問題点を取り上げ、無申告者の増加や所得の申告もれ、源泉対象取引を把握しきれないといった税の歪みを解消するため、年間取引報告書の提供やシェアリングエコノミー取引について源泉徴収の検討などを提言した。
 最後に第3班が登壇し、地方創生に活力を与えるための地方財政のあり方について発表した。まず、ふるさと納税と地方創生として、大阪府泉佐野市と島根県邑南町のインタビュー映像が流れ、それぞれふるさと納税の取組みが紹介された。そして、日本国内において寄附が大衆化しはじめたものの、ふるさと納税で返礼品を提供することは贈答文化の復活に繋がることを指摘した。
 また、地方税収の東京一極集中の歪みについて取り上げ、活力のある地域社会の創生のために、従来の狭い応益課税の考え方から広い応益課税の考え方に変更し、新しい発想による地方税の負担基準の実現を求めたほか、法人住民税と地方消費税の交換を提言した。

第二部テーマ 「人生100年時代における資産形成と税制のあり方」

 第二部は「人生100年時代における資産形成と税制のあり方」をテーマに取り上げ、まず、人生100年時代で様化する人生の確認として、生活、労働、教育の3つのカテゴリーでその実情を確認したほか、アンケートによる社会人の意識調査が報告された。
 引続き、若年層、資産形成層、高齢期のステージに分かれて発表が行われ、若年層の資産形成を支援するための税制の提言としては、働き方の柔軟性と多様性を高める社会の推進や、教育機会の公平性を高めるための支援策を求めた。
 次に、資産形成層は教育資金や住宅資金などで支出が多く、老後資金も蓄える必要がある。そこで、資産形成の手段として、副業、iDeCo、NISAを取り上げた。副業では、事業所得と業務に係る雑所得の判定に関する所得税基本通達の改正案の内容を紹介し、今年8月に実施した改正案に対するパブリックコメントに提出した意見が報告された。
 iDeCoについては、iDeCoだけで2000万円の積立ができるように上限額を増やすことを求めた。ただ、iDeCoは原則60歳まで積立金額を引出せないため、いつでも引き出し可能なNISAを一緒に使った資産形成を提案した。
 NISAについては、令和6年以降の新しいNISAの仕組みが複雑であることから、新しいNISAを廃止するとともに、一般NISAとつみたてNISAの併用可能を提言した。一般NISAの投資可能期間を5年から10年に延長し、勘定設定期間の恒久化も求めた。
 高齢期の財産管理・承継では、健康寿命と認知症について取り上げ、自分の意思を示せなくなる前に、また、自分で財産の管理ができなくなる前に、認知症対策としての財産管理・保全が必須であることを整理した。また、早期に資産移転を図るため、相続時精算課税の利用促進を図るべきとした。さらに、暦年課税制度における相続開始前の生前贈与加算について、年間110万円以下の基礎控除部分は加算対象から除外することを求め、それを条件として生前贈与加算期間を6年に延長することを求めた。相続時精算課税においても、暦年課税制度と同様に特別控除の枠外で年間110万円の基礎控除を創設し、精算課税の対象から除外することを提言した

PAGE TOP