2023年版中小企業白書 国内のM&Aが活発化
2024/01/09
後継者不在の問題が深刻化する中、2023年版「中小企業白書」では、中小企業でも広がりを見せているM&Aについて検証している。
近年、M&Aの件数は増加傾向で推移しており、2022年は過去最多の 4304件となった(㈱レコフデータ調べ)。これはあくまでも公表されている件数のため、未公表のものも一定数存在することを考慮すると、国内のM&Aはさらに活発化していることが推察される。
M&Aの買い手として関心がある企業を対象に、M&Aの目的(複数回答)を尋ねたところ、「売上・市場拡大」が74.6%と最も高く7割を超えている。また「新事業展開・異業種への参入」と回答する割合も46.9%と高く、M& Aを企業規模拡大や事業多角化といった成長戦略の一環として捉えている企業が多いことが分かる。そのほか、「人材の獲得」が54.8%と5割を超えており、M&Aを人材獲得の手段として捉えている企業も多いようだ。
買い手における経営統合時の課題としては、「自社従業員と相手先従業員の一体感の醸成」が 50.3%と最も高く、次いで「相手先従業員のモチベーション向上」が 47.2%だった。M& Aで期待以上の満足度を実感している企業ほど、相手先企業への確認事項として「相手先経営者や従業員の人柄・価値観」を重視しており、白書では「M& A成立前の段階から相手先従業員の人柄や価値観を確認しておき、対策を講じておくことが必要」と指摘している。
買い手としてM& Aを実施する際の障壁(複数回答)を見ると、「相手先従業員等からの理解が得られるか不安がある」と回答した割合が51.6%と半数を超えており、白書では「M& A成立前の段階から相手先経営者や従業員の人柄・価値観を確認しておくことが、不安の解消につながる可能性が考えられる」と分析している。また、「判断材料としての情報が不足している」、「期待する効果が得られるかよくわからない」、「相手先(売り手)企業が見つからない」と回答した割合がそれぞれ3割を超えており、M& Aに関する情報不足や期待した効果を得られるか不明瞭である点を障壁と感じている企業も多い。
買い手におけるM& Aの具体的な効果(複数回答)としては、「商品・サービスの拡充による売上げ・利益の増加」(49.8%)や「商圏拡大による売上げ・利益の増加」(45.4%)など、売上げ・利益面の相乗効果を実感している企業が多い傾向にある。また、「技術・ノウハウ等の横展開」(26.0%)、「ブランドや信用力の向上」(21.0%)など、買い手企業・売り手企業双方の経営資源を組み合わせた相乗効果を実感している企業も目立つ。
このように、中小企業の間でもM& Aは広がりを見せており、M& Aの目的として「売上・市場シェア拡大」や「新事業展開・異業種への参入」を挙げるなど、事業承継だけでなく企業の成長を促す手段としてM& Aが認識されつつある。最後に白書では、「事業承継やM&Aは企業の挑戦や成長を促す転換点といえる。事業承継やM& Aを通じて、後継者が新しい挑戦へ果敢に取り組み、企業の更なる成長・発展につなげていくことを期待したい」とまとめている。