最高裁 「組織再編成税制を濫用」 ~ヤフー事件を振り返る~|税務の勘所|日税ジャーナルオンライン

日税グループは、税理士先生の情報収集をお手伝いします。日税ジャーナルオンライン

MENU

税務の勘所Vital Point of Tax

最高裁 「組織再編成税制を濫用」 ~ヤフー事件を振り返る~

2016/09/14

インターネット検索大手のヤフーが、子会社の吸収合併にともなう税務処理で東京国税局から申告漏れを指摘され、約265億円を追徴課税されたことを不服として、国を相手取って処分の取り消しを求めた訴訟で、最高裁第一小法廷が同社の主張を退けた一審、二審判決を支持し、同社の上告を棄却する判決を下した。大きな注目を集めたヤフー事件を振り返ってみる。

<事件の概要>
 企業の組織再編において、税負担を不当に減少させる「租税回避」の要件について、最高裁が初めて判断を下したわけだが、まずは、今回のヤフーによる一連の組織再編の流れを確認してみる。

 ソフトバンクの100%子会社であるデータ管理会社「ソフトバンクIDCソリューションズ株式会社」(以下、IDCS)は、多額の繰越欠損金を抱えており、ヤフーが吸収合併しようとするが、IDCSはヤフーの数十分の一の規模のため、そのままでは税制上の適格合併(共同事業を営むための合併)の規模要件を満たすことができず、IDCSの繰越欠損金を引き継ぐことができない。

 そこで、ヤフーはソフトバンクからIDCSの全株式を約450億円で買い取り、100%子会社とした上で、税制上の適格合併(100%グループ内の合併)を行った。ただ、合併法人と被合併法人の特定資本関係が5年未満の場合、「みなし共同事業要件」を満たさないと、繰越欠損金の引継ぎに制限が課せられてしまう。この点についてヤフーは、IDCSを吸収合併する約3月前、ヤフーの代表取締役がIDCSの非常勤で無報酬の副社長に就任。これにより、みなし共同事業要件のうち「事業関連性要件」と「特定役員引継要件」(被合併法人の常務以上の役員が合併後に合併法人の常務以上の役員になることが見込まれていること)を満たしたと判断。

 その後、ヤフーはI D C Sを吸収合併し、IDCSから引き継いだ約540億円の繰越欠損金をヤフー本体の損金として処理した。しかし、東京国税局は、法人税法132条の2(組織再編成に係る行為又は計算)の規定に基づき、組織再編税制を利用した租税回避行為と判断。約540億円の申告漏れを指摘し、約265億円の追徴課税を行ったことで争いとなったわけだ。

<最高裁の判断>
 では、132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは、どのようなケースが当てはまるのだろうか――。

 最高裁は、「組織再編税制に係る各規定を租税回避の手段として濫用することにより法人税の負担を減少させるもの」と解釈。その濫用の有無の判断に当たっては、「①当該法人の行為又は計算が、通常は想定されない組織再編成の手順や方法に基づいたり、実態とは乖離した形式を作出したりするなど、不自然なものであるかどうか、②税負担の減少以外にそのような行為又は計算を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するかどうか等」の事情を考慮した上で、「当該行為又は計算が、組織再編成を利用して税負担を減少させることを意図したものであって、組織再編税制に係る各規定の本来の趣旨及び目的から逸脱する態様でその適用を受けるもの又は免れるものと認められるか否か」という観点から判断するのが相当であるとした。

 その上で、最高裁はヤフーの組織再編について、副社長就任は、本件合併などの提案が示された後の依頼で、その前から事業上の目的や必要性が具体的に協議された形跡はないことを指摘。さらに、合併などの提案、副社長就任、企業の買収等の行為はごく短期間に行われていること。取締役副社長となったものの、その業務はおおむね合併などに向けた準備やその後の事業計画に関するものにとどまることなどを挙げて、明らかに不自然なものというべきであるとの見解を示した。

 そして、副社長就任の事業上の目的や必要性が事前に認識されていたとは言い難く、税負担の減少以外にその合理的な理由といえるような事業目的等があったとはいい難いと判断。副社長就任は、組織再編税制に係る各規定を租税回避の手段として濫用することにより法人税の負担を減少させるものとして、132条の2にいう「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に当たるとして、原審の判断を是認。大きな注目を集めた税務訴訟はヤフー側の敗訴で確定した。

PAGE TOP