不動産保有会社の株価めぐり争い 審判所評価通達6項の適用を支持
2026/01/30
資産家が設立した会社に賃貸不動産を購入させ、3年後にその会社の株式を相続時精算課税方式で子に贈与したケースで、その株価に対し、税務署が財産評価基本通達(以下、基本通達)6項を適用して更正処分を行ったことから争いになった事案が明らかになった(国税不服審判所・令和7年4月16日)。

審査請求の原因となる事実の概要
⑴ 平成28年に資産家が、不動産の賃貸等を目的とする法人をつくるため出資し、同社の設立時発行株式すべてを取得。
⑵ 同時に事実上、同社に5年後一括返済の8億8千万円の借入をさせて出資金と併せ、賃貸共同住宅を18億5千万円で買わせた。
⑶ 会社保有資産の評価額に時価縛り(評価通達185カッコ書き)がなくなり通達評価となる令和2年に、資産家の子に株の半数近くを相続時精算課税方式で贈与した。贈与時の会社の株式は借入が残っていたため、通常の評価通達の評価に基づけば極小だった。
⑷税務署は、共同住宅の鑑定評価額を14億円とした上で、同社株式の評価を専門機関に委託した。その結果、同社は不動産賃貸収入のみを得る資産保有会社であり、その状態から純資産ベースで価値を算定するのが合理的とされ、修正簿価純資産方式により株価が算定された。税務署は、この評価額を贈与時の時価として採用し、評価通達6項を適用して税務調査の結果を通知した。
⑸資産家の子は期限後申告することになり、その際、共同住宅の評価額を上記と同じく14億円としつつ、株式の発行会社は取引相場のない株式評価上の「小会社」に該当するとして、純資産価額方式と類似業種比準方式を併用して1株1万9380円とした。
⑹税務署は、(4)の評価通達6項適用に基づく修正簿価純資産方式による評価額で更正処分を行った。
⑺資産家の子はこれに不服があるとして、国税不服審判所(以下、審判所)に審査請求した。
審判所の判断
審判所は、令和4年の最高裁判決の基本的な判断基準を受け継ぎ、当該会社について、事実関係から主に次のような指摘をした。
①同社が贈与日において所有する有形固定資産は、この不動産のみであり、同不動産の取得後から贈与日を含む各事業年度における同社の売上げは、同不動産の建物に係る賃料収入のみであった。
②同社は、贈与日において事業計画を策定しておらず、贈与日までに株式の譲渡が行われた事実もなく、また従業員も雇用していなかった。
これらの事情を踏まえ審判所は、税務署が採用した評価方法(修正簿価純資産方式)が合理的で、その評価額が贈与日の時価を上回るものではないと認められるか否かについて次のように検討した。
1.同社が贈与日において所有するのは不動産のみであり、かつ、その建物に係る賃料収入が唯一の売上げであることからすれば、その収益性を反映して当該不動産の時価を算定することにより、将来の収益獲得能力を反映した合理的な評価が可能となる。
2.同社は、建物に係る賃料収人を唯一の売上げとし、事業の拡大や縮小等の具体的な見込みも認められないことから、同社の状況が成長基調または衰退基調にあるとも認められず、貸借対照表に計上されていない無形資産等が存在する事実も認められないことなどからすれば修正簿価純資産法による評価が不適当となる事情も見当たらない。
以上を踏まえ審判所は、税務署が修正簿価純資産法を用いて算出した価額を贈与時の時価と認め、評価通達6項に基づく更正処分を支持する判断を下した。
なお、本件は資産家の子ら4名に対して同様の手法で行われた節税策について、令和5年11月、複数の国税局を跨いで一斉に評価通達6項を適用する旨の国税庁長官の指示が出された事案の1件だった。
(執筆:税理士法人タクトコンサルティング)