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税務の勘所Vital Point of Tax

居住用としてSOHOマンション購入 一部「非住宅」として東京都が控除認めず

2023/11/07

 SOHO向けの中古マンションの販売チラシに、すべて住宅として使用することも可能と書かれており、住宅用としてマンションを購入したところ、不動産取得税の住宅の特例が受けられず、税金トラブルになった事例が明らかになった(東京都・令和5年2月7日裁決)。

 SOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)とは、仕事場と住まいを兼用する仕事・生活のスタイル、そのような働き方をする事業者、またはその使用方法に適合する建物のことを指す。近年、SOHO向けのマンションも増えているが、税金面では注意が必要だ。

 裁決書によると、納税者Aは令和元年に次のような中古マンションを購入した。
1.売買契約に伴う重要事項説明書に、家屋の用途制限として「SOHO専用」と記載。
2.現況床面積は 75.5㎡。
3.家屋の図面には、「ビジネスルーム」とされる居室①、また、「プライベートルーム」とされる居室②が記載され、居室①については床面積が「約16.4畳」(=26.56㎡)、キッチンには「上下可動扉」があり、居室②には「ウォークインクローゼット」があった。
4.この不動産に係る登記の全部事項証明書には、建物の種類として「事務所・居宅」と記載。

 Aはこのマンションを取得後、課税庁に対し、販売チラシ・マンション管理組合からの取得物件がすべて住宅として使用可能である旨の証明書の写しなどを提出するとともに、不動産取得税調査申請書の申請理由に「自宅として使用し、ビジネス目的として使用しない」などと記載し、課税庁に対して調査・検討を促していた。

 だが、課税庁は居室①部分を非住宅と認定。その他の住宅部分(75.5㎡-25.56㎡=48.94㎡)が50㎡未満となったため、中古住宅に係る不動産取得税の軽減措置の要件を満たしていないと判断したことで、Aが行政不服審査の審査請求に及んだわけだ。

 不動産取得税の軽減措置とは、取得する家屋が中古住宅の場合、(1)自己が使用すること、(2)耐震基準適合既存住宅であること、(3)床面積が50㎡以上 240㎡以下であること、その他の要件を満たす場合、家屋の課税標準(固定資産税評価額)から一定額を控除する特例(地方税法73条の14第3項)。控除額は、住宅が新築された日に応じて決められており、1997年(平成9年)4月1日以降であれば最高の1200万円が控除される(Aが取得した中古マンションは1997年以降に建てられている)。

 Aは「課税庁は使用実態を把握することなく、一方的に住宅と非住宅に分けて不動産取得税を算出している」と非難。また「本件売買契約書および登記完了書には「事務所・居宅」と記載があるものの、売買契約書には事務所と居宅の面積があらかじめ明記されているわけではなく、あくまでも本件家屋は事務所もしくは居宅またはその両方の使用ができることを示しているに過ぎない」と主張、賦課決定の取消しを求めた。

 しかし、東京都の審査会は、次のような理由から家屋の課税標準から1200万円控除することなく、居室①非住宅部分の床面積で按分した課税標準額に原則税率4%を、その他に特例税率3%を適用した課税庁の税額計算に間違いはなかったと判断した。

(1)重要事項説明書の「SOHO専用」との記載があることを重視。Aがこの家屋をSOHO専用であることに合意していることからAが専ら居住利用の目的で本件不動産を取得したとまでは判断できない。
(2)契約上、本件家屋における事務所及び居宅の用途割合が指定されているという事実は認められないものの、SOHOとして利用する場合、居室①を執務スペース、居室②を寝室等の居住スペースと判断するのが合理的

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