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税務の勘所Vital Point of Tax

改正民法(相続法)をチェック! 残された配偶者の生活に配慮

2018/10/11

 民法(相続法)が約40年ぶりに改正され、平成30年7月13日に公布、2年以内に順次施行される。今回の改正は、高齢化社会の進展など社会経済情勢の変化に対応するもので、残された配偶者の生活に配慮する観点などから見直しが行われている。
 
 まず、配偶者の居住を保護するための方策として「配偶者短期居住権」と「配偶者居住権」が創設された。

 配偶者短期居住権とは、配偶者が相続開始時に被相続人の居住建物に無償で住んでいた場合には、一定期間、その居住建物を無償で使用することができる権利。一定期間とは、①配偶者が居住建物の遺産分割に関与するときは、居住建物の帰属が確定する日までの間(ただし、最低6か月間は保障)、②居住建物が第三者に遺贈された場合や、配偶者が相続放棄をした場合には、居住建物の所有者から消滅請求を受けてから6か月。被相続人の意思にかかわらず保護されるほか、常に最低6か月間は配偶者の居住が保護されるメリットがある。

 一方、配偶者居住権は、配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象に、終身または一定期間、配偶者に建物の使用を認めるもの。配偶者が自宅を相続すると、その分、預貯金など他の財産を取得することができないため、中には生活費を確保するために自宅を手放すケースもあった。そこで、配偶者居住権では、遺産である自宅が「配偶者居住権」と「負担付所有権」に分離される。例えば、2000万円の自宅について、配偶者には配偶者居住権(1000万円)を取得させ、長男には負担付所有権(1000万円)を相続させることで、配偶者は自宅に居住しながら、その他の財産も取得できるようになるわけだ。ただし、配偶者居住権は、遺産分割や被相続人の遺贈によって配偶者に権利を取得させる必要があるので注意したい。

 今回の相続法の改正では、遺産分割に関する見直しも行われた。中でも注目したいのが、配偶者保護のための方策(持戻し免除の意思表示の推定規定)だ。例えば、夫が妻の老後の生活保障のために、自分が所有する居住用不動産を妻に遺贈または贈与することがあるが、これまでは「遺産の先渡しを受けたもの」として取り扱われ、遺産分割の際に特別受益の持ち戻しが行われてしまい、夫が贈与等を行った趣旨が遺産分割の結果に反映されないケースがあった。

 これが改正法により、婚姻期間が20年以上の夫婦で、居住用不動産の遺贈または贈与があった場合は、原則として、遺産の先渡し(特別受益)を受けたものとして取り扱う必要がなくなり、配偶者はより多くの財産を取得することが可能となる。

 そのほか、相続した預貯金について、生活費や葬儀費用の支払い、相続債務の弁済などの資金需要に対応できるよう、遺産分割前にも払戻しが受けられる制度を創設。また、自筆証書にパソコンなどで作成した目録や銀行通帳のコピーを添付して遺言書を作成することが可能となったほか、遺留分制度の見直しなども行われている。

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