最高裁 国側の上告を棄却 追徴課税58億円の取り消し確定
2022/06/03
国内で音楽事業を行うユニバーサルミュージック合同会社(ユニバーサル社)が、東京国税局から受けた 法人税約58億円の追徴課税処分の取り消しを求めた訴訟の上告審で、最高裁は4月21日、国側の上告を 棄却。これにより、課税処分を取り消した一審、二審判決が確定し、国側の敗訴となった。
この事案は、ユニバーサル社が同族外国法人からの借入利息を損金の額に算入したことは法人税を「不当に減少させるものだ」として、税務当局から行為計算否認(法人税法132条1項)の適用を受けたことから裁判になっていたもの。
法人税を不当に減少させる行為計算があったと認められる場合、それを否認して法人税を再計算できる法人税法132条1項は、財産評価基本通達に定められた評価通達6と同様(5面参照)、国税当局の「伝家の宝刀」と呼ばれており、今回の訴訟ではその適用の是非が争われた。
最高裁は、まず、行為計算の否認規定である法人税法132条1項にある「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」とは、「同族会社等の行為または計算のうち、経済的かつ実質的な見地において不自然、不合理なもの、すなわち経済的合理性を欠くものであって、法人税の負担を減少させる結果となるものをいうと解するのが相当」と確認した上で、「同族会社等による金銭の借入れが上記の経済的合理性を欠くものか否かについては、当該借入れの目的や融資条件等の諸事情を総合的に考慮して判断すべき」であることを示した。
これを踏まえて、「ある企業グループにおける組織再編成に係る一連の取引の一環として、当該企業グループに属する同族会社等が当該企業グループに属する他の会社等から金銭の借入れを行った場合において、当該一連の取引全体が経済的合理性を欠くときは、当該借入れは、上記諸事情のうち、その目的、すなわち当該借入れによって資金需要が満たされることで達せられる目的において不合理と評価されることとなる。そして、当該一連の取引全体が経済的合理性を欠くものか否かの検討に当たっては、①当該一連の取引が、通常は想定されない手順や方法に基づいたり、実態とはかい離した形式を作出したりするなど、不自然なものであるかどうか、②税負担の減少以外にそのような組織再編成を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するかどうか等の事情を考慮するのが相当」と説示した。
今回の事案に当てはめ、最高裁はユニバーサル社の組織再編について「税負担の減少をもたらすことが含まれていた」とする一方で、最終的に870億円弱の無担保借入に関する事情に関し、経営管理の合理化に向け関連会社整理のための株式買取だけに利用されるためだったことなどから、税負担の減少以外に経済的利益があり、経済的合理性が認められると判断。本件借入れは、法人税法132条1項にいう「これを容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」には当たらないとして国側の上告を棄却。本税約51億2千万円、加算税約7億1万円、合計約58億3千万円を取消した二審の判断が維持された。