日税グループは、税理士先生の情報収集をお手伝いします。日税ジャーナルオンライン

MENU

税務の勘所Vital Point of Tax

東京地裁 役員退職金の損金算入で異例判決 5割増し許容に国は控訴

2018/01/19

 東京地裁は、法人税法上損金の額に算入されない過大役員退職金の計算をめぐり、納税者に有利な異例判決を下した(平成29年10月13日)。

 注目されるのは、最も合理的とされる役員退職金の計算方法である平均功績倍率法の取扱い。この計算方法は、対象の会社と同じ業種、会社の規模等からサンプリングされた他社=比較法人の「役員退職金」の事例実績から、最終報酬月額×勤続年数の値で除した功績倍率の平均値=「平均功績倍率」を求め、対象となる退職役員の最終月額給与の額に、その役員のその内国法人の業務に従事していた年数および功績倍率を乗じて算出するもの。

 東京地裁は、納税者が一般的な認識の可能性として税務当局のように平均功績倍率について厳密な調査は期待できないことに配慮し、税務当局が主張する「平均功績倍率」の5割増しの値まで許容する判断を示した。国側は、この異例判決を不服として東京高裁に控訴している。

 問題になったのは、製造業者が平成21年度の事業年度に、代表取締役が死亡したことに伴い支払った退職慰労金。製造業者は自社で定めた退職慰労金規定に基づき、退職慰労金を240万円(最終月額給料)×27年(勤続年数)×5倍(役員倍数)×1.3(功労加算)=約4億2000万円と計算し支給していた。

 これに対し管轄の税務署は、2 4 0万円×27年(勤続年数)×3.26(サンプルとなった同業他社の死亡退職慰労金の支払い実績から求められた平均功績倍率)=約2億1千万円までが法人税法上損金に算入される金額で、これを超える金額は「不相当に高額な金額」として損金算入を否認し、更正するとともに過少申告加算税を賦課した。

 この処分について製造業者は、「退職慰労金規定に基づいて算定された役員退職慰労金なら問題はないはずだ」などと不服を主張し税金裁判に至っている。

 東京地裁は、役員退職金の計算方法である平均功績倍率法について、「同業類似法人の抽出が合理的に行われ、かつ、その平均功績倍率を当該法人に適用することが相当と認められる限り、(不相当に高額な役員給与の損金不算入を定めた)法人税法3 4条2項及び(不相当に高額な役員退職給与について定めた)法人税法施行令70条2号の趣旨に合致する合理的な方法というべき(カッコ内編集注)」とし、サンプルの選定についても合理的と判断した。

 しかし、平均功績倍率法の適用に当たっては、「本来役員退職給与が当該退職役員の具体的な功績等に応じて支給されるべきものであることに鑑みると、平均功績倍率を少しでも超える功績倍率により算定された役員退職給与の額が直ちに不相当に高額な金額になると解することはあまりにも硬直的な考え方であって、実態に即した適正な課税を行うとする法人税法34条2項の趣旨に反することにもなりかねず、相当であるとはいえない」と指摘。「納税者側の一般的な認識可能性の程度にも十分に配慮する必要があり、役員退職給与として相当であると認められる金額は、事後的な課税庁側の調査による平均功績倍率を適用した金額からの相当程度の帯離を許容するものとして観念されるべきもの」とした。

 さらに乖離の程度について東京地裁は、「少なくとも課税庁側の調査による平均功績倍率の数にその半数を加えた数を超えない数の功績倍率」という具体的かつ納税者に有利な判断を示している。

 争いのステージが東京高裁へと移った今回の裁判。今後の行方が注目される。

PAGE TOP