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税務の勘所Vital Point of Tax

東京都は上告断念 駐車場業をめぐり納税者勝訴

2021/10/26

 コインパーキング業者に土地を貸した地主が「駐車場業」を営んでいる者に該当するかどうかで争われた裁判で、東京高裁は8月26日、一審(本紙第40号参照)に続き、「駐車場業に当たらない」と判断。東京都が上告を見送ったことで、同様のケースにおけるこれまでの課税への対応が注目される。

 この事件は、コインパーキング業者に駐車が10台可能な土地を貸付けていた個人の地主が、平成28年分から平成30年分までの所得税等につき、収入を不動産所得として申告をしたところ、東京都から都の事業税に関する事務提要に基づき、地主が個人事業税の課税対象となる「駐車場業」を行う者に該当するとして、個人事業税の賦課決定処分を受けたことから、その取消しを求めて争われていたものだ。

 一審の東京地裁は、地方税法上、「駐車場」の内容のほか、「事業」自体の意義についても一般的に定義規定が置かれていないため社会通念に従ってこれを判断するほかはないとして、「駐車場業」について「対価の取得を目的として自動車の駐車のための場所を提供する業務を自己の計算と危険において、独立して反復継続して行うものであることを要する」と解釈。

 これに事例を当てはめて「地主は土地を定額で貸付けているに過ぎない」、「対価の取得を目的として自動車の駐車のための場所を提供する業務を自己の計算と危険において、独立して反復継続して行うものであると評価することはできない。従って資産家は駐車場業を行うものに該当しない」と判断していた。

 東京高裁は、一審判決の判断の枠組みに基づく駐車場業についての「認定判断は、その手法も含め相当であると認められる」とした。また、東京都が、おおよそ「国の取扱通知や東京都の事務提要にある判断基準の合理性が検討されていないのはおかしい」と主張したことに対し、東京高裁は、取扱通知や事務提要は法律ではない以上、課税根拠である地方税法の一審のような解釈に沿う限りにおいて合理性を有すると指摘。今回の地主の事例のように、事務提要などが駐車場業に当たらないものも駐車場業と解する可能性があるなら、不合理と評価せざるを得ないと断じている。

 この判決を受け東京都主税局は上告せず、取扱いを「土地を一括で貸付けた場合で、建築

物・機械式駐車場設備を自ら設置せず、貸付先が第三者に駐車させているケースは駐車場業としない」ことに変更。これに伴い過去の賦課分のうち駐車場業と認定されなくなるケースでは最高5年分遡って還付される。

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