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税務の勘所Vital Point of Tax

相続税調査 課税価格1億円未満の調査件数が増加傾向に

2020/10/20

 最近、課税価格1億円未満のクラスに対する相続税の税務調査が増えていることが分かった。

 平成30事務年度の資産税事務処理状況表(平成30年7月1日~令和元年6月30日)によると、全国の相続税の調査件数は1万2463件で、前年度と比べて0.9%減少している。しかし、全体としては減少しているものの、課税価格1億円未満クラスに対する調査は2738件と前年度から8.1%の増加。特に、5千万円未満クラスでは233件と件数は少ないが、前年度と比べて17.7%も増加している。

 これにともない、見つかった申告漏れの金額(増差課税価格)も増えており、1億円未満クラスでは約936億円と前年度から26%の増加。5千万円未満クラスでは、約67億円と金額そのものは少ないが、前年度と比べると61.8%と大幅に増加している。

 税務調査の日数についても、1億円未満クラスは1年間で2万9241日と前年度から11.7%増えており、5千万円未満クラスは2368日で2 5 . 6 %の増加となった。

 見つかった申告漏れ(増差課税価格)を調査日1日当たりの金額で見ると、1億円未満クラスは約320万円。1億円以上(約219万円)、3億円以上(約144万円)、5億円以上(約173万円)、7億円以上(約170万円)と比べると、見つかった申告漏れの調査日1日当たりの金額としては、1億円未満のクラスが最も高くなっている。つまり、課税価格1億円未満は、ある意味、税務当局にとって調査効率の良いクラスになっているというわけだ。

 また、納税者が意図的に財産を隠すなどして重加算税が課税されたケースを見ても、1億円未満のクラスは前年度から39.1%と大きく増加し、509件に上っている。

 相続税の基礎控除引下げにともなう課税対象者のすそ野の広がりを受けて、税務当局でも税務調査の対象を広げている――そんな姿勢が今回のデータから垣間見ることができる。

 一方、相続財産をめぐる争いというと、資産家の問題と思われがちだが、司法統計年報によると、遺産分割事件で争っている金額の割合としては5000万円以下が全体の76.3%を占めている。このように遺産の多い少ないに関係なく、相続人が複数いれば、どんな家庭でも争いが起きる可能性があるだけに、相続税調査で指摘されないように適正な申告を行うのはもちろんのこと、相続を『争族』にさせない事前対策を打っておくことも重要といえる。

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