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税務の勘所Vital Point of Tax

不動産取得税の住宅用地減額特例 適用要件の「取得者」めぐる争い

2024/10/28

 不動産取得税には、住宅の取得に関して特例がいくつか用意されている。たとえば、敷地となる土地を取得して、原則として2年以内(2026年3月までは3年以内)に所定の住宅を新築した場合、土地取得に係る税額が軽減される特例だ(地方税法73条の2 4 、以下、減額特例という)。所定の住宅とは、1戸建ての場合は床面積50平米以上240平米以下の住宅を指す。

 減額される税額は、次のどちらか大きい方だ。①4万5千円、②その土地の固定資産税評価額(宅地や宅地並み評価の土地の場合はその2分の1)×住宅の床面積の2倍の値(1戸当たり上限200平米で、持ち分の場合はその割合を乗じた値)×税率3%を乗じて求めた金額。

 ただし、土地を先に買って住宅を建てるケースで、この減額特例を受けられるのは、(ア)土地の取得をした人がその土地を住宅の新築の時まで引き続き所有している場合か、(イ)土地を取得した人からその土地を得た人(譲渡の相手方)が住宅を新築した場合に限られる。

 最近、土地を取得した親とその子が住宅建築している最中に相続が発生し、この減額特例の要件(ア)(イ)をめぐりトラブルになったケースが明らかになった(東京都裁決令和6年1月26日)。

 裁決書によると事案の概要は次のとおり。
1.被相続人Aは、平成28年4月に宅地(以下、本件土地という)を取得した。
2.課税庁である東京都は平成28年8月、Aから不動産取得税申告書を収受した。この摘要欄には、「住宅新築予定」「軽減適用予定」と記載されていた。
3.東京都は平成30年1月に別途、建築確認済証を収受した。
4.平成30年10月、被相続人Aの長男であるBは、Aから本件土地を相続により取得し、所有権移転登記がなされた。相続人は被相続人の長男Bと長女C(審査請求人)の2人だった。
5.本件土地に住宅が新築されたのは平成31年1月で、Bが代表を務める法人を所有者として表示登記がなされた。
6.東京都は令和2年12月に、本件土地の取得に関し、Cに対し、亡A不動産取得税承継分として減額特例を適用せず賦課処分を行った。
7.それを不服として、Cは令和3年3月に審査請求をした。Bは取得者Aから相続により本件土地を取得したものであるから、「当該取得をした者が当該土地を当該特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合」に該当すると主張した。

 審査庁(東京都)は、不動産取得税が課税される「不動産の取得」について、過去の判例から「所有権の得喪に関する法律効果の側面からではなく、その経過的事実に則してとらえた不動産所有権取得の事実をいうものと解するのが相当であるとされる」と基本的な考え方を示した。

 そのうえで、審査庁はこのケースで賦課処分の対象となった「不動産の取得」(本件取得)は、被相続人によってなされBはその後、相続を原因として本件土地について「不動産の取得をした者」であり、相続による取得は不動産取得税が非課税になるが、「住宅は、被相続人が本件土地を取得した日から3年以内に新築されていることは認められるものの、同人は、すでに死亡しており、Bはそれに伴う相続により本件土地に係る「不動産の取得」をした者であって、その経過的事実に則してみれば、本件取得における本件減額規定の「取得者」には当たらず、これと同視することもできない」と指摘。

 結論として「本件減額規定における「取得者」が(ア)の要件「当該土地を当該特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合」を満たすということはできない」と判断した。

 また審査庁は、住宅を新築した者はCとは認められないため、(イ)の「当該特例適用住宅の新築が当該取得者から当該土地を取得した者により行われる場合に該当するとも認められない」として、最終的に賦課を行った東京都の処分に違法・不当な点はないと判断している。

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