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マラソン塾

Vol.53 日本記録更新、ネガティブラップ

2018/11/02

 東京マラソンでの日本記録更新(2月)、ベルリンマラソンでの世界記録更新(9月)に続き、先日のシカゴマラソンでまたも日本記録更新のニュースが入ってきました。日本人として初めて5分台(2時間05分50秒)をマークしたのは大迫傑選手。学生時代から注目を集め続けた大迫選手、社会人となってからはプロランナーとしてアメリカに渡り、ナイキオレゴンプロジェクトに所属して活動しています。

 今回はシカゴマラソンの結果についてお伝えするとともに、『ネガティブラップ』について解説できればと思います。

<シカゴマラソンと大迫選手の走り>
 シカゴマラソンは高速コースで知られており、2000年前後には男女の世界記録も更新された大会。また、世界記録が更新された2002年には、15年以上も続いた日本記録が樹立されました。(高岡寿成選手、2時間06分16秒)
 
 10月の大会ということで高温や風が強いケースも多く、またアメリカの大会ではペースメーカーをつけないことが主流となったこともありましたが、今年はペースメーカーも用意され、風雨があったものの、まずまずのコンディションになりました。

 しかしレースでは、ペースメーカーの走りが安定せず、5km毎のラップは14分台から、遅い時は15分20秒近くかかることも。ハーフは1時間03分04秒(大迫選手)で通過しましたが、20~25kmが15分28秒かかり、2時間07分~08分がゴールタイムになるような流れとなりました。

 そこで海外の選手がペースアップ。今までの日本人なら離れて粘って、という展開になるところでしたが、大迫選手の走りは違います。ペースアップにしっかり対応し、5km毎のラップは14分30秒前後という、『世界基準』の走りを披露。残り5kmを切って離されてしまいましたが、しっかり勝負して、2時間05分台の好記録で3位。

 大迫選手はこれまでの3レース(ボストン、福岡、シカゴ)、全て外すことなく3位。記録的にも着実にステップアップさせていくものでした。

<ネガティブラップ>
 さて、今日のメインテーマは大迫選手の走りでも披露された『ネガティブラップ』についてです。『ネガティブラップ』とは、前半よりも後半のペースを上げて走ることで、いまや世界記録も日本記録もネガティブラップで出されたものです。(逆に前半のペースが速い場合を『ポジティブラップ』といいます)

 世界的に結果を残す選手の多くがネガティブラップで走ることから、『マラソンレースではネガティブラップで走るのがいい!』という話もされていますが、これは鵜呑みにしない方がいいと思います。

 例えば、日本国内の国際マラソンを想定してください。3分/kmペースでペースメーカーが設定されているとき、そのままのゴールタイムは2時間06分台。これは多くの日本人にとって『速いペース』となりますが、単独で走るより集団で走るほうが走りやすいため、集団に入り、後半ペースを落として走り切るポジティブラップになります。

 他方、自己ベストが2時間04~05分台の海外ランナーにとっては、2時間06分台は『遅いペース』です。余裕をもって集団につき、30km以降にペースを上げるネガティブラップが可能となります。

 つまり、ネガティブラップはあくまで走った際の結果であり、最初から狙うようなものではないと思います。むしろ大事なことは『レースの流れ』に乗ること。例えばサブ4を狙うとき、ペースメーカーについて集団で余裕をもって走り、終盤に少しペースアップするネガティブラップで走り切ることが理想です。

 仮にハーフを2時間以上かけると、後半でペースアップしようにも同じような選手は少なく、『レースの流れ』に乗ることが難しくなります。

 ポジティブラップ・ネガティブラップはあくまで『結果』です。むしろどのように走るかという『プロセス』が重要です。『結果』は『プロセス』をしっかり積み上げた結果についてくるものだと思います。

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