Vol.61 厚底シューズ
2020/02/05
年末は全国高校駅伝、年始は全日本実業団駅伝、箱根駅伝、都道府県対抗駅伝と続いてきましたが、いずれも超高速レース、好記録が続出してきました。その背景には、NIKEの厚底シューズがあると考えられています。私自身も履いている厚底シューズについて、感じることをお伝えできればと思います。
<初代、2代目、3代目と進化>
NIKEの厚底シューズ、ヴェイパーフライについては、
2017年~初代・ヴェイパーフライ4%
2018年~2代目・ヴェイパーフライ4%フライニット
2019年~3代目・ヴェイパーフライNEXT%
と現在3代目となりましたが、1年ごとに大きく改良されてきました。
初代の登場から革新的なシューズでありましたが、
○流通量が限られて履きたくても履けないシューズであり
○適した走り方でないとパフォーマンスを引き出せない
ということで、初代は本当に一部のランナーが履いていた印象です。
それが2代目になると比較的容易に手に入るようになり(私も2代目を入手し、昨年はレース用、いまは練習用で利用中です)、3代目のNEXT%になると一気に普及、トップ選手のほとんどが履くシューズになりました。
特に3代目のNEXT%は格段に進化を遂げており、反発を得られる"スイートスポット"が拡大した印象です。結果として、多くのランナーにとって扱いやすいシューズになりました。
<3つの機能>
ヴェイパーフライには大きく、
①カーボンプレートによる反発
②厚底によるクッション性
③前足部と踵部の高度差(オフセット)によるフォームの矯正
といった機能があると感じています。
①は最も分かりやすく感じるところですが、シューズがバネの役割を果たしてくれるため、地面を蹴る力を使わなくても"勝手に"進んでくれる感覚を得ることができます。
②はズームXという素材がソールに使われていることによるものですが、柔らかな履き心地・クッション性が感じられると同時に、厚底なのに200gを切る軽さを両立させています。フルマラソンでは足のダメージで後半に失速するケースがみられるものですが、クッション性の高さもあって失速のリスクは大きく減った印象です。
③は厚底とカーボンの組み合わせによるものですが、踵部が前足部より1cm程度高くなっているため、感覚的にはずっと"下り坂"を走っているようです。体を前傾姿勢にして走ることが求められますが、その姿勢をキープすることでカーボンの機能も活用し、どんどん前に進むでしょう。
<実際の感覚と使い方>
上記の①~③の機能を踏まえると、使いこなし方にもよりますが、感覚的にはハーフで1分、フルで2分くらいは速く走れるのではないかと思います。1kmあたり3秒ですが、それを少ないダメージで走れるため、フルマラソン後半の失速リスクも下がった印象です。
もっとも、"使いこなす"ためには力量が必要で、具体的にはフォームの矯正が必要となります。私自身、前傾できず"地面を蹴って"しまう癖があり、結果的にそれが先月、故障したことにつながりました。
いまはジョグ用のシューズから前傾を意識できるシューズ(ペガサスターボ2)に変え、フォームも徐々に矯正できているせいか、ヴェイパーフライを履く際にも以前より違和感なく、速く走れるようになってきたところです。
ヴェイパーフライNEXT%になって走り方によらずスピードは出しやすくなりましたが、前傾姿勢を後半まで保つこと、そのために姿勢をよく、体幹を鍛えることをすれば、更にその力は引き出されるはずです。
国際陸連による規制も噂されておりますが、いまは店頭にも並ぶようになりましたので、機会があればぜひ話題のシューズに足を通してもらえればと思います。