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遺産分割協議中の株式の権利行使者

2017/03/31

<質問>
 社長であった父が亡くなりました。父が会社の株式の大部分を持っていたのですが、遺言はありませんでした。私は弟と折り合いが悪く、次期社長の座をめぐって争いになりそうです。遺産分割協議の成立までにはある程度時間がかかってしまいそうなのですが、その間、父の遺産である会社の株式の議決権は誰がどのようにして行使することになるのでしょうか。


<回答>
 遺産分割協議中の株式は、その全部について、相続分に応じた共有関係になります。よって、会社法106 条により、相続人の中から株主の権利を行使する者を1 名選び、会社に「代表者届」を提出して、議決権を行使することになります。代表者の選定は、相続分に応じて過半数で決定します。

 ただし、相続人が1 対1にわかれて対立しているときは、どちらも過半数を得ることができず、この場合には、その共有株式について、相続人は議決権を行使することができなくなってしまいます。そのような事態を避けるためにも、生前中の対処や、遺言書の作成が望ましいでしょう。


最高裁第3 小法廷 平成9 年1 月28 日判決

 
「有限会社の持分を相続により準共有するに至った共同相続人が、準共有社員としての地位に基づいて社員総会の決議不存在確認の訴えを提起するには、有限会社法22 条、商法203 条2 項により、社員の権利を行使すべき者(以下「権利行使者」という)としての指定を受け、その旨を会社に通知することを要するのであり、この権利行使者の指定及び通知を欠くときは、特段の事情がない限り、右の訴えについて原告適格を有しないものというべきである。」(最高裁第3 小法廷平成2 年12 月4 日判決)

 「そして、この場合に、持分の準共有者間において権利行使者を定めるに当たっては、持分の価格に従いその過半数をもってこれを決することができるものと解するのが相当である。けだし、準共有者の全員が一致しなければ権利行使者を指定することができないとすると、準共有者のうちの一人でも反対すれば全員の社員権の行使が不可能となるのみならず、会社の運営にも支障を来すおそれがあり、会社の事務処理の便宜を考慮して設けられた右規定の趣旨にも反する結果となるからである。」

今回のアドバイザー:内田 久美子 弁護士

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