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深く考えず子供名義に。「うっかり贈与」の救済措置

2019/05/10

「先生、主人が少し前に息子名義でマンションを買いまして……」
「あらら、贈与税の相談ですね」
「はい。マンション購入は聞いていましたがまさか息子名義だとは……。こういう場合は贈与税がかかるんですよね」
「そうですね」
「主人にそれを話したら『自分名義に戻せないか』っていうんですけど、そうしたら息子からの逆贈与になってまた贈与税がかかるんでしょうか?」
「いえ、大丈夫ですよ。無税で戻せる方法があります」

■必要がなくても、親は財産を子供名義にしがち
 親が財産価値のあるものを購入するときには、子供名義にしたがる傾向があるものです。


 金銭贈与の場合、もらった側に贈与税がかかることはほとんどの方がご存じですが、マンションなどの購入時に資金負担をしてあげることが贈与である、ということには気づいていないのかもしれません(もしくはバレないと思っているのかも)。

 そのため子供名義にする必要がない状態であっても、わざわざ子供名義にしているケースも見かけます。たとえば子供が1人で親と同居していて相続でのもめ事も考えづらく、自宅の評価額も「小規模宅地等の評価減」で80%減額できるため、相続税対策もあまり必要ない場合などです。これらは意味のない名義変更であり、勘違いというか、十分な知識がないためにそうしてしまった、という形です。

 そのような場合でも、住宅取得資金の特例や相続時精算課税を活用することにより課税を回避することはできますが、のちのち相続人同士のトラブルに発展するくらいなら「いっそ元に戻してしまいたい」という思いを持たれるケースもあるようです。

■50年以上前の通達のおかげで億単位の税を回避
 少し前の話ですが、私の相談者に先祖代々の同族株式を数十億円で譲渡したAさんがいました。Aさんが所得税の申告をしたところ、すぐさま税務調査が入りました。譲渡した株式が長年にわたって取得したものであったため、いつ、いくらで誰から購入(贈与、相続含む)したかという「取得費」を説明するのが大変だったのですが、そこはなんとかクリアしました。


 調査終了も近づいたある日、「受け取ったお金は今、どのような財産になっていますか?」と調査官に聞かれ、Aさんは「ハワイに移住しようと思っているので、大半はハワイの不動産の購入に充てました」と答えたのです。

 そうしたらなんと翌週に「譲渡所得税の調査は終了しましたが、奥さんへの贈与税の調査に切り替えるのでよろしくお願いします」と連絡がありました。調査官はハワイの不動産が夫婦共有名義になっていることを調べ上げたわけです。

 こちらも現地でのアドバイス(現地では共有名義にあたる「ジョイントテナンシー」にするのが一般的)に基づいて名義を確定しただけで、Aさんに奥さんへの贈与の意識はなかったようです。しかも共有名義にはなっていたものの、確定申告はAさん本人が単独で行い、国外財産調書にも本人の財産として記載していました。

 お金の流れからしても実態からしても「贈与ではない」とAさんは主張したのですが、不動産に関しては「名義で判断せざるを得ない」との回答でした(実際、調査官も気の毒がっていました)。

 やむを得ず「名義を元に戻すので贈与税の対象にはしないでほしい」と主張したところ、何度かのやり取りの末、「そのように扱ってよいという通達があるので認めます」と調査官は了解してくれました。

 急いでハワイの弁護士に名義変更手続きを依頼して、結果的にはAさんは億単位になるかもしれなかった贈与税を課税されずに済みました。その通達とは、1964(昭和39)年5月23日に当時の国税庁長官から各国税局長に宛てた「名義変更等が行われた後にその取り消し等があった場合の贈与税の取り扱いについて」というもので、国税庁のウェブサイトに出ています。

 この通達は「うっかり他人名義で登記しても、贈与の意図がなく錯誤である場合は、名義を戻せば贈与がなかったものとして取り扱う」という内容で、まさに庶民の味方ともいうべき心強い通達です。Aさんもこれに救われました。

 ただし、登記を元に戻す場合は登録免許税などの登記費用はかかりますので、その点はお忘れなく。

 アドバイザー/内藤 克 税理士

 ※同コラムは、内藤先生執筆の書籍『残念な相続』(日本経済新聞出版社)に掲載されています。『残念な相続』の詳細、ご購読はこちら。

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