遺産分割協議と民法541条による解除の可否
2017/03/24
<質問>
父が亡くなり、母と長男、次男、長女、次女の5人が相続人となりました。遺産分割協議の結果、長男が、法定相続分より多い遺産の分割を受けましたが、その際、長男は他の相続人に対し、「長男として母と同居し、母を扶養し、長男の妻とともに母の日々の食事などの身の回りの世話をする」ことを約しました。ところが、長男は全く約束を守らず、母を虐待し、傷害を負わせる始末です。そこで、遺産分割協議を解除したいのですが、可能でしょうか。
<回答>
遺産分割協議を解除することはできないと解されています。
最高裁第1 小法廷 平成元年2 月9 日判決
「共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の一人が他の相続人に対して右協議において負担した債務を履行しないときであっても、他の相続人は民法541 条によって右遺産分割協議を解除することができないと解するのが相当である。けだし、遺産分割はその性質上協議の成立とともに終了し、その後は右協議において右債務を負担した相続人とその債権を取得した相続人間の債権債務関係が残るだけだと解すべきであり、しかも、このように解さなければ民法909 条本文により遡及効を有する遺産の再分割を余儀なくされ、法的安定性が著しく害されることになるからである。」
今回のアドバイザー:内田 久美子 弁護士