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税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

小規模宅地等の特例適用は? 相続した共同住宅の空室部分をめぐるバトル

2024/04/22

 被相続人は令和元年10月に死亡。本件相続に係る共同相続人は、いずれも被相続人の子である長女および請求人の2名。遺産分割協議により相続財産のうち、A市にある土地(本件宅地)とその上の建物(本件共同住宅)を請求人が取得した。

 本件共同住宅は、木造2階建て全8部屋で構成され、相続開始の直前には101、103、105号室の3部屋が貸し付けられ、102、201、202、203、205号室は空室だった(本件各空室部分)。

 請求人は、相続税の申告書を法定申告期限までに長女と共同で提出。その際、小規模宅地等の特例を適用して相続税の申告をした。しかし、本件各空室部分は特例を適用することができないとして原処分庁が更正処分等をしたことから争いが起きた。

 争点は、本件各空室部分に係る本件宅地の部分に本件特例の適用があるか否か。

 請求人は、「本件特例に係る法令には、「賃貸割合」を乗じて計算するとは規定されておらず、貸付事業の用に供していれば本件特例は適用されるから、本件各空室部分を除いた賃貸割合を乗じて計算する必要はない」、「国税庁のホームページに掲載されているタックスアンサーNo.5400-2では、「事業の用に供した日」とは、現実に入居がなかった場合でも、建物が完成し、入居募集を始めていれば事業の用に供したものと考えられる旨記載されている」、「本件各空室部分については、被相続人が複数のインターネットサイトで入居者の募集をしている」などとして、「本件宅地は、そのすべてが貸付事業の用に供されていた宅地である」と主張した。

4年6か月以上の空室に審判所が下した判断は?

 審判所は「102、202、203号室は、平成27年4月以前から空室で、相続開始時において少なくとも4年6か月以上も空室状態が続いており、実質的にみて相続開始の時に賃貸されていたのと同視し得る状況になく、一時的に賃貸されていなかったものとは認められない」と指摘。

 また、「201と205号室は、相続開始の時から約2か月前と約5か月前に入居者が退去しており、空室期間は長期にわたらない。だが、インターネットの情報サイトには相続開始の時も本件共同住宅の入居者を募集する広告が掲載されていたが、被相続人と一般媒介契約を締結した不動産業者が本件共同住宅に関して入居者を仲介した実績がないこと、不動産業者が被相続人と連絡が取れなかったことにより平成27年以降の本件共同住宅の空室状況を把握していなかったこと、不動産業者ではオーナーから広告の掲載を取りやめたい旨の申出がない限りその掲載を継続する扱いをしていたことからすれば、被相続人が一般媒介契約および広告を放置していたにすぎず、積極的に本件共同住宅の新たな入居者を募集していたとはいえない。現に、201、205号室については、本件申告期限までの期間をみても新たな入居者はなく、相続開始の時に賃貸されていたのと同視し得る状況になく、一時的に賃貸されていなかったものとは認められない」と判断。

 「本件各空室部分は、被相続人の貸付事業の用に供されていたとは認められないから、本件各空室部分に対応する部分に本件特例の適用はない」とした。 (令和5年4月12日裁決)

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