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税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

決裁方法を変更した理由は? 小切手に変えた後に計上漏れ

2020/01/17

 請求人は、紳士服や婦人服などの企画等を目的とする法人。請求人の取締役はA(以下、A代表)のみで、従業員はA代表の妻(以下、妻B)のみだった。

 請求人が保管している平成26年10月8日付のF社宛の納品書(控)には、「つなぎ」および「パターン修正代」合計26万6400円の納品をした旨の記載があり、また、同日付のF社に対する請求書(控)には、消費税8%を合わせて28万7712円の金額が記載されていた。F社は、平成27年1月15日付で額面金額28万7712円の小切手を振り出し、妻Bは翌日、銀行で小切手を現金化した。なお、小切手の裏面には、F社の住所、法人名および代表取締役としてJ(以下、J代表)の記名押印ならびに妻Bの署名があった。

 請求人は、平成27年5月決算と平成28年5月決算の各事業年度の法人税をいずれも法定申告期限内に申告。平成27年5月決算における消費税等についても法定申告期限内に申告した。平成29年10月、原処分庁の調査担当職員が、請求人に法人税等の実地調査を行ったところ、F社への売上額28万7712円が平成27年5月決算の売上等に計上されていないことが発覚。請求人は、調査担当職員から指摘を受けて修正申告を行ったが、原処分庁が重加算税の賦課決定処分をしたことで、その取消しを求めて争いが起きた。

 原処分庁は、「F社のJ代表は、請求人との決済方法が銀行振込みから小切手に変更されたことについて、自分から変更してほしいと頼んだことはなく、頼まれなければ小切手に裏判を押すこともないと申述している」、「請求人とF社との3回の取引のうち、過去2回はいずれも銀行振込による決済であったにも関わらず、本件取引が小切手で決済されたのは、請求人のA代表が、銀行振込みでなければ売上げに計上されないことを認識した上で、取引先に決済方法を銀行振込みから小切手に変更するよう依頼して請求人の売上げを脱漏した」と指摘。

小切手の決済を選んだのは請求書が遅れて届いたため

 一方、請求人は、「F社とのやり取りは担当者Kと行っており、J代表とはほとんど面識がない。J代表の申述は一般的な取引に関して申述したもので、事実を正確に把握しているとはいえない」、「F社との取引は3回だけで、過去2回の取引は銀行振込だったが、いずれも3年以上前の取引のため本件取引の決済方法が変更されたことに特段特異な点は見受けられない」、「請求人はA代表と妻の二人だけの零細小規模法人で、業務の繁忙等から小切手の受領の入力を失念した」などと主張した。

 審判所は、F社の担当者Kに話を聞いたところ、「請求人のA代表から本件取引の支払いがないとの連絡があり、そもそも請求書が来ていないと伝えた。その後、請求書を受け取ったので小切手で支払ったが、小切手で決済したのは、F社では銀行振込みによる決済を決まった時期にまとめて行っており、請求書が遅れてきたので銀行振込みの時期からずれてしまい、個別に銀行振込みを行うのが手間だったので小切手で支払ったと記憶している」などと答述。その内容に審判所は、「本件取引の決済が小切手により行われたのは、F社側の事情によるものであると認めるのが相当」、「請求人は、売上代金を現金で受領した場合でも売上げに計上されていることが認められるほか、A代表が売上代金を銀行振込みされなければ売上げに計上されないと認識していたことを裏付ける証拠も認められず、原処分庁の主張には理由がない」として、請求人に事実の隠ぺいまたは仮装の行為があったと認めることはできないと判断した。(平成31年2月7日裁決)

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