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税務バトルから学ぶ 審判所の視点 ザ・ジャッジ

事業所得を含めず確定申告 重加算税の賦課決定処分が取り消された理由

2017/07/25

 医療機関等への派遣事業を営む請求人は、パソコンを使って事業に関する請求書を作成し、スタッフの報酬についても、パソコンで報酬明細書を作成して請求人口座から振り込んでいた。また、請求人口座からクレジットカードの利用金額や生命保険料などを支払うほか、借入金の返済を行っていた。

 平成19年から平成25年までの各年において、請求人は、業務委託料や支払報酬に関する帳簿を含め、事業に関する帳簿を一切作成していなかった。そして、この各年分における給与所得や株式等に係る譲渡所得等について、確定申告書を自分で作成し、確定申告を期限内に行った。この給与所得とは、請求人が医療機関等において業務に従事したことなどによるもので、派遣事業に関する所得税等や消費税等の確定申告は一切行っていなかった。

 その後、請求人は税務調査を受け、派遣事業に係る収入があることを認め、各契約書や預金通帳のほか、パソコン内に保存していた事業に関するデータを提出。そして、所得税等の修正申告と消費税等の期限後申告をしたところ、原処分庁が、事実の隠ぺい又は仮装の行為に当たるとして重加算税の各賦課決定処分をしたことで、その取消しを求めて争いとなった。

帳簿を作成していないのは所得などを秘匿するためか?

 請求人は、「派遣事業に係る所得を所得税等の確定申告に含めなかったのは、事業所得についての知識が欠落していたためで、意図的にほ脱の目的をもって過少申告をしたものではない。また、消費税等についても知識がなく、自分が課税事業者であることを認識していなかったためで、意図的な隠ぺい行為を行ったとはいえず、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたともいえない」と主張。

 一方、原処分庁は、「請求人は、事業によって多額の利益が生じ、帳簿書類を作成して確定申告をすべき金額であることを十分に認識していながら、債務弁済や利殖のために税を免れることを意図し、事業に係る収入金額を一切記載しない内容虚偽の確定申告を行い、消費税についてもあえて申告していなかった。これらの一連の行為は、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、過少申告等をしたものと認められる」とした。

 これに対して審判所は、「請求人が、事業に係る所得をすべて秘匿して、給与所得および株式等に係る譲渡所得等のみを記載した内容虚偽の確定申告書を提出したことは、単なる所得計算の違算や亡失というものではなく、当初から所得を過少に申告する意図の下になした過少申告行為、または法定申告期限までに申告しないことを意図して行われたものと認めるのが相当である」と指摘。

 しかし、「請求人自らが請求書や報酬明細書をパソコンで作成し、業務委託料はすべて請求人が管理する口座に入金されている」、「請求書や報酬明細書の書類等を破棄することなく、パソコン等に保存していたことからすると、請求人が帳簿を作成していないのは、これらの書類等により、事業に関する収入金額や必要経費などおおよその利益を把握することができた可能性が残り、請求人が秘匿するためにあえて帳簿を作成しなかったとまでは断定し難い」と判断。「請求人が事業に係る帳簿を作成していなかったことをもって、過少申告等の意図を外部からもうかがい得る特段の行動とまでは評価することができない」として、重加算税の賦課決定処分を取り消した。

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