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トラブルは現場で起きている!

宗派を偽った僧侶のなりすまし事件

2019/12/17

 我が国の葬儀の9割は仏式(仏教式)で行われているといわれます。仏式の葬儀は、司会者の「導師、入場」の声とともに始まります。厳粛な空気の中を、導師と呼ばれる僧侶が前に進み出て席に着きます。それから導師の長い読経の声が響き渡り、遺族の間から忍び泣く声が漏れ聞こえてくると、葬儀は佳境へと入っていきます。導師は、死者に引導を渡し、死者の霊を弔う葬儀を中心になって執り行う存在です。

 この導師と呼ばれる僧侶が何者であるかによって、課税関係が変わることがあります。寺院で葬儀を執り行う場合、その寺院の施設である本堂や会館を葬儀場として用います。そこにその寺院の僧侶が出仕して葬儀を執り行えば、それは宗教活動として、遺族から受け取った財貨は対価性のないお布施として扱うことになります。

 しかし、その寺院の僧侶でなく、他の寺院の僧侶が出仕して葬儀を執り行い、その寺院が遺族から財貨を受け取った場合には、その寺院は単に葬儀の場所を貸した対価であるとして、収益事業の席貸業に該当します。

 令和元年12月13日の新聞報道で発覚したのは、宗派を偽り葬儀で読経した僧侶が提訴されたという事件です。福岡市の遺族4人が僧侶と葬儀会社を相手取り、別の宗派の僧侶になりすまされて葬儀を執り行われたとして、慰謝料など計約600万円を求めて福岡地裁に提訴しました。遺族は、「なりすまされた僧侶に導師として読経をされ、多大な精神的苦痛を受けた」と訴えています。

 新聞報道によると、2017年5月、福岡県古賀市の女性が亡くなり、古賀市内で通夜、葬儀が営まれました。女性の夫の家は、浄土真宗のある宗派であり、葬儀会社にもその宗派の僧侶の読経を依頼。福岡市内の僧侶が読経しました。しかし、その僧侶はその宗派の僧籍を失っており、別の宗派の僧侶だったのです。葬儀の場でも寺の名前を挙げて紹介されましたが、その寺と僧侶は関係がありませんでした。過去に所属していたため、衣を持ち、葬儀の流れもわかっていたそうです。お布施も払っていましたが、2年後に、本来遺族が望んでいた宗派の寺から「おわび」として遺族に連絡があり、発覚しました。僧侶と葬儀会社は遺族に謝罪しましたが、葬儀会社は「なりすましたことは知らなかった」と主張してるとのこと。

 どうやら、この僧侶の偽装事件に課税関係は絡んでいないようですが、どういう結末になるか、裁判の行方が気になるところです。

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