宿坊人気の陰で四国お遍路さんの異変
2019/10/28
外国人旅行者の増加に伴って、お寺や神社の宿泊施設である「宿坊」の利用者が増えていると聞きます。宿坊は、1泊1,000円以下(2食付きで1,500円)で共同浴場、共同トイレなどの簡易共同宿泊施設に該当すれば収益事業の旅館業になりませんが、今どきの旅行者がそんな施設に泊まりたいはずがありませんので、お寺や神社ではほとんどが立派な収益事業としての旅館業を営んでいます。ところが、こうした宿坊のメッカであるはずの四国で遍路客が大きく減少して宿坊を止めてしまった寺もあるというのです。
歩きの巡礼旅は世界的なブームになっていて、スペインのサンティアゴ巡礼路では1992年には1万人に満たなかった巡礼者が、1993年の世界遺産登録を経て、右肩上がりに増加し、2018年には32万人を超えたといいます。
日本で巡礼旅というと、四国のお遍路さんです。映画『男はつらいよ』の第49作の舞台は四国の高知で、寅次郎がお遍路さんのマドンナ役「田中裕子」に恋をする『寅次郎花へんろ』と決まっていたそうですが、主演の渥美清が1995年8月4日に死去したことにより実現しませんでした。寅さんの映画は48作で終わったのです。お遍路さんの映画でよく知られているのは、1972年公開の映画『旅の重さ』です。家出をして四国遍路の旅に出た16歳の少女の役を高橋洋子が演じて話題となりました。
四国遍路には千年の歴史があり、おそらく戦国時代も、明治維新も、日露戦争の時も途絶えることはなかったお遍路さんが、さすがに昭和20年の終戦をはさむ2~3年は四国路から姿が消えたといいます。しかしその後、高度成長を経て団体旅行が盛んになってくると団体バス遍路が一般化しました。そして、平成に入って本四連絡橋などが整備されたことでマイカー遍路が全盛期を迎えます。しかし、永くは続きませんでした。
どの時期を境にしてなのかわかりませんが、四国の原風景ともいえるお遍路さんの姿がしだいに減っていき、四国遍路はひところに比べて4割から5割減ったといわれるようになりました。ただ、外国人遍路者は増えており、とりわけフランス人の遍路者は多いといいます。今後は外国人遍路者を受け入れやすい環境を整え、将来の世界遺産登録も含めて、四国遍路の再興に向けた取り組みを進めていく方向のようです。