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トラブルは現場で起きている!

自己破産した一般社団法人の甘い夢

2019/09/26

 老人ホームの倒産が過去最多の水準に上っているそうです。関東地方の37カ所で老人ホームを経営していた「未来設計」が民事再生法の適用を申請したのは今年の1月で、その負債総額は54億円でした。また、福岡県行橋市で老人ホームを経営していた社会福祉法人「友愛会」も今年の6月に自己破産を申請し、負債総額は6億8千万円に上りました。老人ホームの倒産で、一番の痛手を受けるのは入居者です。払い込んだ入居金は戻らず、精神的なダメージは計り知れません。

 ところで、倒産といえば一般社団法人が自己破産したという珍しいニュースが入りました。新潟で食文化の発信や交流をテーマに、レストランを出店したり、観光も兼ねた2階建てのレストランバスを運営していた一般社団法人ピースキッチン新潟が、今年の8月1日に自己破産を申請したというのです。負債総額が7,700万円と聞くと、結構リアリティのある数字ですので、詳細は分かりませんが、この法人と取引のあった地元の中小企業がババ抜きのババを引かされて弱っている様子が思い浮かびます。というのも、この一般社団法人のイベントには行政や地元経済界なども参加して、大いににぎわいを見せている様子でしたので、雰囲気だけでうまくいっているのだろうと誤認してババを引かされても無理もなかったと思われるからです。

 そもそも飲食業界は、大企業から中小企業、零細企業までが新旧入り乱れてしのぎを削る激戦区です。言葉や雰囲気だけで商売できるような甘い世界ではありません。新聞報道によると、レストランの売上高は月100万~150万円程度で、赤字は月400万円になることもあったといいますから、この一般社団法人のレストラン事業は、始めからビジネスとして成立していなかったのではないでしょうか。レストランバスの方も、やはり赤字だったようですが、2017年に主催者が新潟市に変わってから赤字は免れていたといいますから、新潟市が観光振興のためにあえて泥をかぶることにしたのでしょう。

 地域活性化を旗印にして甘い夢を見るのも結構ですが、一般社団法人が、最初から赤字の事業で、行政の補助金や委託金をもらった上に、地元住民を巻き込んで自己破産するという構図は何ともいただけないと言うしかありません。

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