特定医療法人の承認が取り消された徳洲会事件
2021/10/25
非営利の世界で関係者に特別の利益を与えることは、ときに法人の“命とり”となります。公益社団法人や公益財団法人、認定NPO、一般社団法人や一般財団法人の非営利型法人など、関係者に特別の利益を与えないことが求められ、それに反すると認定取消しや否認の原因となります。また、関係者に特別の利益を与えることは、関係者の相続税や贈与税を不当に減少させる結果となるとして、非営利の法人に相続税や贈与税が課税される租税回避防止措置を相続税法は定めています。
医療法人の世界でも、特定医療法人や社会医療法人では関係者に特別の利益を与えないことが求められています。特定医療法人は、その事業が医療の普及および向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与し、かつ公的に運営されていることにつき、国税庁長官の承認を受けた法人として、全所得課税でも軽減税率が適用されています。社会医療法人は、救急医療、へき地医療、災害医療などの公益性の高い医療を担う法人として、都道府県知事の認定を受け、収益事業のみ課税を受ける公益法人等の中に含まれます。
2015年4月に、関係者に特別の利益を与えないことの要件に反するとして、特定医療法人の承認を取り消されたのは、その数年前から様々な事件の渦中にあった徳洲会グループの医療法人「沖縄徳洲会」でした。
沖縄徳洲会では、徳田虎雄理事長の次男である徳田毅衆議院議員の選挙に病院職員を派遣し、病院が選挙運動員としての給料や経費を負担したことが特別の利益供与に当たるとして、国税庁は特定医療法人の承認を取り消して、2010年3月以降の軽減されていた5年間の法人税約32億円分の納付要求をしたのでした。
徳洲会事件は、創業者一族とグループの運営方針をめぐって対立した事務総長が懲戒免職となり追放されたことが発端となりました。隠されていた創業者一族の女性問題や選挙違反事件、政界との金の問題がこの元事務総長から次々とリークされ、次男は衆議院議員辞職、また政界に流れた金の問題では当時の猪瀬東京都知事が辞任するという事態に発展した事件でした。