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トラブルは現場で起きている!

10億円の横領事件でわかった労働組合の裏事情

2020/03/16

 女性の横領事件というと必ず思い起こされるのが1973年に起きた滋賀銀行事件です。奥村彰子という当時42歳のベテラン行員が、6年間でおよそ1300回にわたって史上空前の9億円を着服し、そのほとんどを10歳年下の元タクシー運転手山形元治に貢いでいたという事件でした。ギャンブル依存のヒモ男に食い物にされた女子行員の悲しい結末、当時の女性の横領事件には必ずと言っていいほど裏で糸を引く男の影がありました。裁判では奥村に懲役8年、山形に懲役10年の判決が言い渡されました。

 しかし、それから時代は大きく変わりました。1985年には男女雇用均等法が成立。1999年には男女共同参画社会基本法が施行され、「男性も女性も、意欲に応じて、あらゆる分野で活躍できる社会」が宣言されました。また、2015年には女性活躍推進法が成立し、女性の社会進出にますます拍車がかかることになりました。

 そうしたことが背景にあるわけではないでしょうが、2020年1月に発覚した住友重機械労働組合連合会の横領事件は、否が応でもこうした時代の変化を感じさせるものとなりました。逮捕された田村純子という60歳の女性職員は、10億円を超える横領をして、ポルシェを乗り回し、馬術競技用の馬6頭を所有するなど、すべてを自分の嗜好や趣味に費やしていたのです。

 住友重機械工業のような大企業の労働組合は通常、事業所単位で作られているので、会社全体ではそれらが集まって労働組合連合会のような別法人の組織になっているわけですが、組合員から給与天引きで集められた闘争資金が今はあまり使われることがなく、相当貯まってダブついていたものと推測されます。

 そうした資金の内部事情にあまり精通しないうちに2年ごとに改選される労働組合の役員たちに代わって、その資金を一手に管理していたのがベテラン職員の田村でした。役員たちは、自分らの飲食代や出張旅費などの清算をいつも重宝にやってくれる田村に、そんな裏の顔があろうとは考えてもみなかったに相違ありません。

 大企業の労働組合は、多かれ少なかれ同じような構図になっていると思われますので、この事件を聞いて、あわてて預金通帳を確認したところも少なくないのではないでしょうか。

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