社会福祉法人の評議員ら8人が逮捕された事件の裏側
2021/05/27
社会福祉法人の評議員5人が、理事長らから20万円の賄賂を受け取っていました。理事長ら3人は、自分の息のかかった者を理事に選任してもらうことを頼んでいました。それは、社会福祉法人にできたばかりの贈収賄を禁じる規定に違反する行為でした。山梨県甲府市の社会福祉法人大寿会の評議員や理事長ら8人が、贈収賄の容疑で山梨県警に逮捕されたのは、令和3年2月25日のことです。
贈収賄というと、通常は公務員やそれに準ずる「みなし公務員」などが対象ですが、平成28年の社会福祉法人改革で社会福祉法人にも贈収賄罪が設けられていました。このときに改正された社会福祉法では、理事や評議員は、社会福祉法人の運営に必要な「識見」を有することが求められていますが、逮捕された8人は、そのような「識見」を有するどころか、社会福祉法にも通じていなかったのです。もっとも、事件の首謀者とみられる贈賄側の高利貸しや金融ブローカーを生業とする男たちは、法を破ることなどなんとも思っていなかったに違いありません。
では、彼らはなぜそんなことをしたのでしょうか。その動機を探っていくと、この事件の裏側に潜む大きな利権が見えてきます。それはリニア中央新幹線の工事計画です。この社会福祉法人の施設の場所は、リニア中央新幹線山梨県駅の予定地のすぐ近くに位置していたのです。どうやら、首謀者らはこの法人を乗っ取ることで、駅近の物件を手に入れようとしていたようです。
しかし、社会福祉法人を乗っ取るといっても、会社のように株式や出資があるわけではありません。社会福祉法人を所有する仕組みはなく、理事などの役員を交代することで、支配の実効性を確保するということですが、しかしそれがある種の人たちにとっては社会福祉法人を乗っ取るということなのです。
この事件の起きるちょうど1年前、元理事長の男が3,700万円の業務上横領の罪で逮捕され、懲役4年の判決を受けていたのですが、この元理事長の男が高利貸しの男に1億円の利益を受け取る条件で法人を譲渡する約束をしたことが、この事件の発端となったようです。そして、当時の理事長もこれに協力して、理事を入れ替えるために、その選任権のある評議員に賄賂を渡したのでした。