障害者を雇用して行う事業と給与支払いの実態
2017/04/17
戦後最悪の大量殺人事件となった相模原障害者施設殺傷事件は、平成28年7月26日未明に起き、社会に大きな衝撃を与えました。あれからまだ1年も経ちませんが、事件の印象が次第に薄れつつあるのを思うと、移り変わりの速い私たちの社会の在り方が空恐ろしくなります。
我が国の障害者の数は、平成23年の調査によると、787万9千人で人口の約6.2%に相当しています。そのうち、身体障害者は393万7千人、知的障害者は74万1千人、精神障害者は320万1千人となっています。平成8年の調査では、576万人でしたから、大きく増加していることがわかります。このことは、我が国の社会構造の変化を反映しているといえそうです。
ところで、障害者の中で、従業員数5人以上の規模の事業所に雇用されて働いている人は、44万8千人で、障害者全体の5%程度とされています。このように、まだまだ少ない障害者の就労を促進しようと様々な制度が設けられていますが、法人税法の中にもそういうものがあります。
公益法人等では、課税の対象となる収益事業であっても、従業者の半数以上が障害者で、かつその事業がこれらの者の生活の保護に寄与している場合には、収益事業から除外して課税しない取扱いになっていることです。
しかし、この制度を悪用し所得隠しをしていたとして摘発されたケースもありました。平成17年6月29日の新聞記事によると、兵庫県西宮市の宗教法人「アガペ教会」は、身体障害者を半数以上雇用して有料老人ホームの運営や不動産賃貸業などを行っていましたが、支払っていた給与は事業収入のわずかに過ぎず、とても生活の保護に寄与しているとはいえないものでした。そのため、収益事業からの除外に当たらないものとして、平成14年3月期までの5年間で13億7千万円の申告漏れを指摘され、3億8千万円の追徴課税を受けたのでした。
NPO法人や公益法人などでも、障害者や高齢者を半数以上雇用して行っている事業は珍しくありませんが、ほとんどが生活の保護に寄与しているといえるほどの給与を支払っておらず、収益事業からの除外を受けられないのが実態のようです。