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社長貸付金・社長借入金消去の税務 ~証拠の論点も踏まえて~㉘

2024/06/07

1)

(1)反証について

 題材として反証について当局がどのように理解しているかを確認します。

 当局は、簿外経費等は、その存在を合理的に推認させるに足りる程度の具体的な反証を行わない限り、当該簿外経費等は存在しないとの事実上の推定が働く。としています。

 具体的には、「本件の争点」簿外の経費及び貸倒損失は損金の額に算入できるか否か。についてのコメントです。

「裁判所の判断」として、簿外の経費及び貸倒損失は損金の額に算入できるか否か(争点3)について法人税法は、内国法人に対し、事業年度ごとに所得金額及び法人税額等を記載した申告書を提出するよう義務付け(74条1項)、当該申告書には、当該事業年度の貸借対照表及び損益計算書等の書類を添付しなければならないものとするなど、確定した決算に基づいて正しい申告をすべきことを求めている上、損金となる費用の存在が納税者にとって有利な事実であり、その証憑書類を整理・保存し、帳簿に計上することも容易であることからすれば、X社が損金として未申告の簿外の経費及び貸倒損失が存在すると主張するときは、当該証拠との距離からみても、X社が損金となる簿外の経費及び貸倒損失の存在を合理的に推認させるに足りる程度の具体的な反証を行わない限り、当該簿外の経費及び貸倒損失は存在しないとの事実上の推定が働くものというべき(※下線筆者)である。

 X社は、簿外の経費及び貸倒損失がある旨主張し、これを裏付ける証拠を提出するが、X社の実質的経営者であるAは、商業ビルの固定資産売却益を不正に圧縮するため、配下の者等に指示をするなどして、内容虚偽の関係書類を多数作成させていること、Bが、Aの配下の者や貸付先の顧客は、普段から不定期に、Aに対して、印鑑登録証明書や登録印鑑を預けさせられていた旨供述していることなどを鑑みると、提出証拠は上記簿外の経費等の支払を仮装するために作成された可能性があるから、信憑性を欠く(※下線筆者)ものというべきである。

 以上に述べたところによれば、X社が簿外経費等を支払ったとの事実はないと認めるのが相当であり、この認定を覆すに足りる的確な証拠はない。

 これを踏まえて「国税訟務官室からのコメント」においては、次のように述べています。

<簿外経費等の立証責任等について>

 簿外経費等の存在については、調査段階あるいは不服申立て段階に事後的にその証拠が提出され、主張される場合が少なくない。
 簿外経費等の立証責任については、本判決において「損金として未申告の簿外の経費及び貸倒損失が存在すると主張するときは、当該証拠との距離からみても、その主張する者が損金となる簿外の経費及び貸倒損失の存在を合理的に推認させるに足りる程度の具体的な反証を行わない限り、当該簿外の経費及び貸倒損失は存在しないとの事実上の推定が働くものというべきである。」と判示されている。

 しかしながら、このような簿外経費等の存在は、課税所得の計算に直接影響を与えるものであることから、これらの主張があった場合には、調査・検討を十分に行い適切に対応する必要がある。事案によっては、虚偽の簿外経費等の存在を主張する場合も考えられ、これを見逃した場合には、著しく課税の公平を欠くこととなるので、留意されたい。

 本件においては、不服申立て段階において、簿外の支払手数料、借入金の支払利息、弁護士費用及び貸倒損失が存在するとして、主張及び証拠の提出がなされたが、入念な調査、証拠書類等の検討・分折を行い(下記に事例の一部を示す。)、弁護士費用を除いては、その支払の事実及び貸倒損失の前提となる貸付けの事実は認められない旨主張・立証し、裁判所もこれを認め、国側が勝訴した。

 事後的に簿外経費等が主張され、これに関する証拠の提出がなされた場合には、虚偽のものである可能性も十分にあり得ることから、その主張や証拠を鵜呑みにせずに、書類の作成当時の時代背景や社会情勢なども考慮し、その真偽を検討することが重要である。

 簿外経費の争点以前の問題として契約書等々の記載内容についてどこに着目すべきか詳説されています。
 証拠との接近性から納税者に挙証責任があるとの争点もあがっていますが、そもそも当初申告の挙証責任は課税庁側にあることを貫徹し納税者側が勝訴した事例も当然あります。

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