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スキルアップ税務

社長貸付金・社長借入金消去の税務 ~証拠の論点も踏まえて~㉔

2024/04/17

1)

○地裁の判断(仙台地裁平成22年7月6日判決)

 課税庁は、①本件金員が、調査対象者の下船時期に合わせて支払われていること、②調査対象者への支給明細には、本件金員について「精算」と記載されていたことなどからすれば、本件金員は給料精算金であり、調査対象者の給与の収入金額は、家庭送金分(60万円又は70万円)に留保金10万円を加えた金額であると主張した。 
 
 しかし、地裁は、平成15年3月までの調査対象者の給与の収入金額については月固定給70万円(家庭送金分60万円と留保金10万円)であるが、再契約後の平成15年4月以降の調査対象者の給与の収入金額については、A社と調査対象者との間で月固定給の増額が合意されたことをうかがわせる事情はないから、家庭送金分の70万円のみであると判断した。
 
 一方で高裁の判断(仙台高裁平成23年4月13日判決)(1)仙台局長が行った追加調査(※)の結果によれば、4名の同業者のうち、平成14年又は平成15年に再契約を締結した3名について、いずれも月固定給が10万円増額されているのであるから、調査対象者についても、平成15年の再契約の際に、月固定給が従前の月額70万円から月額80万円に増額されたことが十分推認されるものというべきである。

※追加調査:仙台局長が、調査対象者と同様、遠洋鮪延縄漁船の漁労長(兼船長)としてA社との間で乗船契約を締結し給与収入を得ている者について、仙台局管内の全税務署長に対し、月固定給額、家庭送金分の月額、契約時期等に関する報告等を求めた。その結果、気仙沼税務署長から名4の同業者の報告があった。

◆調査に生かすポイント◆
 本件のように契約書等、直接的な証拠が存在しない場合や当事者における契約内容や合意内容が必ずしも明らかではない場合には、同業者においてどのような契約が行われているか等、間接的な証拠の積み重ねにより課税要件事実を推認するといった観点から証拠収集をすることが重要である。なお、証拠収集の方法が不明な場合は、審理担当者等に相談するなどした上で、有効な証拠収集をすることが重要である。

○その他行政文書 調査に生かす判決情報
情報 調査に生かす判決情報第56号 平成28年4月 
~判決(判決速報№1387【源泉所得税】)の紹介~ 東京国税局課税第一部国税訟務官室

(一部抜粋)
国税訟務官室からのコメント

4 国側が主張した(中略)の事実は間接事実であり、いずれもそれ単体では本件各簿外資金がXからAに対して貸し付けられたものではなく、Aが利得したものであるというには十分なものではなかった(例えば、金銭消費貸借は口頭契約の場合もある。)が、これらの間接事実を積み上げて本件各簿外資金はXからAが利得したものである旨主張したところ(※下線筆者)、裁判所は、本件各簿外資金の作出方法や管理・費消状況、本件各貸付けの態様、XにおけるAの役割等に関する事実を認定した上で、Xの業務はその全てがA自身によって、又はその指揮監督の下に行われていたものというべきであり、本件各簿外資金はXの業務に係る架空取引を通じて作出され、Aが利得したものであるということができると認定した。 
 
 その上で裁判所は、所得税法28条の解釈に当てはめ、本件各簿外資金は、AがXの代表者として提供した役務又は労務の対価として受けた給付と評価することができるとして、Xは、Aに対し、本件各簿外資金を所得税法28条1項が規定する給与等として支払ったものというべきであると判断したものである。

5 税務調査における主要事実、いわゆる課税要件事実の認定に当たっても、上記4の裁判所の認定と同様であり、課税要件事実の存否を直接証明する証拠(直接証拠)を把握することが困難な場合、間接証拠から導き出される間接事実を積み上げることによって課税要件事実の存否を椎認することができる場合がある。また、直接証拠から把握した課税要件事実について、間接事実との整合性を検証することによって、認定できる事実であるか否かを検討することができる場合もある。

 このように、間接事実は事実認定において重要な役割を果たすものであり、間接事実の量に比例して事実認定の正確性を高めることができる。そして、間接事実をより多く把握するためには、税務調査において多くの資料を収集し、当事者から聴取した事項についても証拠化しておくことが肝要である。

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